美術公募展の二科展で、湯浅町の彫刻家、橋本和明さん(59、写真)の作品「Kanon─時を渡る」が彫刻部ローマ賞を受賞した。文部科学大臣賞に次ぐ賞で、海外研修の権利を得た。「ギリシャ語で『戒律』を意味する『Kanon』に込めた制作の意味をさらに深めたい」と考える。
「戒律」意味する彫刻 評価
智辯和歌山中高や和歌山信愛女子短大で指導した橋本さん。和歌山市の堀詰橋にある平和の碑『天啓の宙(そら)』や智辯和歌山校図書館の像『開かれし扉』などを制作した。金沢美術工芸大学時代から同展に応募し、今回が38回目だ。
受賞作は、すらりとした女性が真っ直ぐ立つ高さ1・9㍍の石こう像。肩の後ろに、幅1・6㍍の長方形板が羽のように左右に伸び、頭は上部が崩れ落ちたような形を見せる。「強さ、はかなさ、怒りといった感情を戒める」との思いを込めた。 Kanonをテーマに応募するのは13回目。「テーマは同じでも、その年ごとの精神状態から、思いは少しずつ変わっています。特に、東日本大震災の後、創作する意味を問い直し、悲しみ、喜び、痛みなどを含め、『祈り』を込めないといけないと強く思いました」
昔からミケランジェロの彫刻にひかれる。完璧と感じる作品が多い中、最晩年の未完作『ロンダニーニのピエタ』の写真をイーゼルにはり、これを見ながら制作した。「人間ミケランジェロを感じます。Kanonのイメージは『観音』に通じ、飛鳥時代の百済(くだら)観音がしっくりくる。今後もKanonを柱に続けたい」と語る。
二科展は10月31日(火)〜11月12日(日)、大阪市天王寺区の市立美術館。700円、当日900円。
(ニュース和歌山/2017年10月14日更新)