廃部危機乗り越え
一時は廃部の危機にあった和歌山県立医科大学柔道部が10月の関西医歯薬学生柔道大会団体戦で2連覇した。部を引っ張るのはこの大会、個人戦で3年連続優勝を果たした神前貴洋主将(24)。10年前、部員が1人になった時、部の存続に奔走した兄、拓平さん(27)の思いを受け継いだ。神前主将は「大学創立以来の歴史ある部に光が差しました」と笑顔を見せる。
「乱取り、始め」。夕方、和歌山市和歌浦西の県立武道館に、指導する神前主将の声が響く。和医大柔道部は現在10人が所属。指導者はおらず、神前主将が中心に考えたメニューで汗を流す。
今年は6月の近畿九医科大学親善大会、8月の西日本医科学生総合体育大会、そして10月の医歯薬大会と、医療系大学で競う3つの大会全てで団体戦を制した。医歯薬大会は個人戦で神前主将と副主将の山本悠太選手(20)が1、2位を占め、新人戦も藤内拳士郎選手(20)が優勝した。
この活躍に目を細めるのが、柔道部OBの拓平さんだ。柔道部は大学創立の1945年に立ち上がり、医学部の定員が1学年60人と少なかった60年代も常に約20人が在籍。国体出場選手もいた。しかし、2000年代に入って部員が減少し、02年、活動は中断した。
拓平さんはたった1人の先輩の跡を継ぎ、部員集めに走り回った。「柔道部なんてあったの?」と見向きもされない中、存在感を示そうと孤軍奮闘し、近畿大会個人戦で優勝。未経験者が納得して入部できるよう、指導者資格を取得した。こうした努力が実り、15年、部員は14人にまで増えた。「悔しさでいっぱいの時期もありましたが、無駄でなかったと証明してくれました」
拓平さんが種をまき、神前主将が育てた部は今年、3つの大会で団体戦の頂点に立った。団体戦で大将を任された尾関隆広選手(22)は「僕が入部した5年前より、はるかに強いチームになっている。一丸となって相手に勝つ気持ちよさを味わえました」。また、山本副主将は「神前主将がつくる『柔道は楽しい』との雰囲気が人を呼び、大会での結果につながっているのかもしれません」と声を弾ませる。
神前主将は「今では柔道未経験者が昇段試験を受けるまでになった。来年出場する全日本大会に向けて練習を重ねていきたい」と話している。
写真=関西大会個人戦3連覇の神前主将(前列中央)と部員たち
(ニュース和歌山/2017年11月18日更新)