職業体験イベント「未来スクール」が12月10日、和歌山市で開かれ、私も講師の一人として新聞記者の仕事を紹介しました(12月16日号に掲載)。小学生10人に取材、原稿執筆と新聞作りを体験してもらいました。

 未来スクールは、地域の大人が、地元で働く楽しさややりがいを伝えようと2014年に始まりました。私は趣旨に共鳴し、第1回から参加しています。

 メンバーに加わろうと思ったのは、約10年前、キャリア教育で地域と学校の橋渡しをする名古屋のNPOアスクネットの活動を知ったのがきっかけでした。「和歌山にあったら良いな」という取り組みだったのです。

 学校で職業教育の授業を開きたい場合、教員はこのNPOへ相談します。業種や指導内容を話し合い、地域にいるその道のプロを紹介。職場体験や学校での出前授業を企画します。ほかにも、親子キャンプや保護者向けの講座を開き、学校を中心に、教員や保護者以外の地域の大人たちの出番を生み出しています。

 こうした活動は、教員の負担減につながります。特に今年は過労が問題視されました。時間外の部活指導はもちろん、生徒の職場体験を受け入れてもらえるよう、各社へお願いして回るなど慣れない仕事や、事務作業、生活指導の比重が大きくなっています。全国で5000人の教員が精神疾患により休職しています。

 アスクネットの取り組みは、こうした現状に変化をもたらす可能性を秘めています。学校と地域の様々な立場の人を結ぶことで、保護者は地域に目を向け、つながりの中で支え合う関係を意識し、教員は異なる立場の意見を聞いて視野を広げられます。住民が学校運営に参画するきっかけになります。

 人は、多様な価値観や考え方に出合う中で、学ぶ意欲を見つけ、自ら成長する力を身につけます。それは子どもだけでなく、保護者や教員、地域の大人にも言えます。キャリア教育はこの学び合いの代表例と言えます。

 未来スクールは回を重ねるごとに参加者が増えており、職業教育のニーズの高まりを感じられます。まだ、年に1度のイベントですが、アスクネットのように組織として地域に根付けば、社会全体で地域の未来を担う人材を育成できます。それが、教員の負担を軽減し、学校の学びの幅を広げることにつながるのです。 (林)

(ニュース和歌山/2017年12月23日更新)