新たに有権者となる年代に政治参加を促そうと、和歌山県内主要選挙で公開討論会を開いてきたわかやま市民自治ネットワークが、粉河高校の卒業生らに呼びかけて6月20日、参議院和歌山選挙区公開討論会を共同開催した。
投票率アップを目標におく同ネットは、18歳選挙に合わせて「若者の討論会運営への参加」を探った。メンバーでもある同校の横出加津彦教諭を介して、OBの大学生らとつながりを持ち、4月に「わかやま夢スクール実行委員会」を立ち上げた。
学生らに運営ノウハウを伝え、事前準備から当日の運営まで学生が主になって進められるよう、ネットメンバーはサポート役に徹した。橋本雅史理事長は「若い人だけに任せるのは初めて。不安と期待が半々でしたが、会議を重ねるごとに彼らの意識が高まっているのを感じました」。政治に関心がなかった夢スクールの西端崇典副委員長(桃山学院大学3年)も「討論会を通して大人と若者の距離を縮めたい。そのために、自分にできることをやろう」と考えた。
開催に当たり、立候補予定者への質問は高校生から募った。横出教諭や和歌山北、海南の高校教諭が呼びかけ、寄せられた質問を元に、実行委の学生が「回答が分かれ、考え方の違いが明確に出るような質問」を選別。加えて、「みんなでつくりあげる討論会に」との思いを込め、来場者も回答できる質問を準備し、討論会で投げかけた。20歳前後の若者たちを巻き込んだ試みが、彼らの政治参加につながるか。
学生目線で質問選別
立候補予定者による公開討論会を主催するわかやま市民自治ネットワーク。10年前から、未成年を対象に模擬投票を実施し、子どものうちから政治に興味を持ってもらえるよう取り組んできた。今回は若い世代と共同で夢スクール実行委として討論会の開催に踏み出した。
これと並行して、粉河高校では横出加津彦教諭が「夢を実現するには」をテーマに授業を企画。自分の夢、地域の課題を出させ、実現と解決に向け、自分たちにできること考えさせた。その上で、参院選立候補予定者へ質問を出し合い、横出教諭が取りまとめて実行委に託した。
実行委では、大学生らが主体的に高校生から寄せられた質問を6項目に絞り、会場を含めた○×式質問の作成に取り組んだ。また、開催告知チラシを作成し、当日は、受付や司会、運営の一切を担当した。
夢スクールの西端崇典副委員長は「高校生の質問に、奨学金や非正規雇用に関する内容が多かった。大学生にとっても切実な問題で、これは絶対入れたかった」と振り返りつつ、国会議員の仕事に関する素朴な疑問も盛り込んだ。自治ネットの橋本雅史理事長は「我々が質問を考えると、『安保関連や消費税は外せない』となりがちですが、学生の目線で関心の高い内容を質問できたと思います」と説明する。
討論会を終え、東詩歩実行委員長(和歌山大学1年)は「運営に携わったことで、予定者から出された意見をどう判断するかなど政治にかかわることの大切さを実感しました」、西端副委員長は「自分も含め、会場と予定者が向き合える場となった」と満足した様子。橋本理事長は「討論会をつくっていく中で、彼ら自身の考えがまとまっていくのが分かりました。それがうれしい」と笑顔を見せた。
今後、横出教諭は討論会の模様を紹介し、課題を主体的に考える授業を続ける方針。自治ネットも討論会のあり方を再考するきっかけとなりそうだ。
写真=討論会を進行した西端(左)、島本満里那の両副委員長
(ニュース和歌山2016年6月25日号掲載)