隣近所の人が立ち寄れる感覚の店をと2年前、和歌山市吹上にオープンした「和茶縁」。素材の配色で季節を表現したランチセットをはじめ、全て手作りの家庭料理が人気の店だ。オーナーの杉岡左知子さん(58)のこだわりは「同じ料理を出さない」こと。「毎日来ても新しい料理を食べられ、お客さん同士、自然と話が弾む店に」と語る。

料理でつなぐ縁

──住宅街の一角に店を構えます。

 「2年前、実家を改装しオープンしました。近隣が高齢で一人暮らしの方が多く、集まる場をつくりたいと思ったんです。私が子どものころによく見た、軒先で談笑する風景をこの場所に──。〝わちゃわちゃ〟楽しんでほしいという思いから名付けました」

──その思いを料理店で実現しようと。

 「おばが和食の店をしていて、手伝う母の姿を見て育ちました。母が普段、作ってくれる料理は、決して手の込んだものではなかったけれど、私の誕生日に握り寿司を作ってくれたのが印象に残っています。料理でだれかに喜び、感動してほしいという思いが強いですね。毎日違うメニューなら毎日来ても感動してもらえて、毎日来てもらえるお客さんが増えれば、お客さん同士の輪が広がると思うから」

──今までに何品を。

 「ほぼ毎週メニューを変えている『和茶縁ランチ』のために生み出したメニューは、2年で100品近く。同じ料理でもアレンジを加え、全く同じものはほとんど出していません。以前、住宅の営業をしていた時、新築の家のドアを開けたところに『おめでとうございます』と書いた花を置いたところ、お客さんに喜んでもらえた。喜ぶ顔を見るのはやりがいにつながります。『ものを売る』ということは感動を届けることだと思うから、驚いてもらえる料理をいつも目指しているんです」

2度の驚きを

──感動を与える料理とは?

 「料理が出てきた時の素材や器の彩りの美しさと、口に入れた瞬間、想像とのギャップがある料理です。例えば去年の夏に出したのが、種をくり抜いた桃の中にハンバーグを入れた一品。桃の甘さとタマネギの甘さが絶妙のハーモニーを生み出します。今は桜もちに使う道明寺粉でレンコンを包み、見た目は桜もちそっくりのレンコンまんじゅうを考えています」

──目で楽しめる料理なんですね。

 「和茶縁ランチなら、メーン以外で7品。品数が多く、全体の彩りで演出します。先日はひき肉の代わりに大豆をこねて焼き、甘みが出て食感が残るよう煮込んだタマネギの輪切りをのせたソイバーグで、最後にトマトとブロッコリーをのせ、春の『花』と『芽吹く葉』を表現しました。味噌汁には栄養のある野菜の皮やきのこの根元の部分を煮出したスープを入れ、見た目に分からないところまでこだわります」

──今後はどんな店に。

 「夕飯時に来ていた近所の方同士が店で顔を合わせるうち、毎週誘い合わせて来てくれるようになりました。『今日は何よー』と料理を楽しみに来てくれる常連さんもいます。いつも新しい驚きをこの場所で感じ続けてもらい、さらに新しいお客さんが増えて、もっとたくさんの人の集いの場になるよう、毎日新しいメニューを生み出し続けます」

写真=人気メニューのタンシチュー

【和茶縁】
和歌山市吹上3-5-6 ☎080-5389-5325
7:30〜19:00(予約で夜営業も可)
金曜・土曜のみ7:30〜22:00 水曜休み

(ニュース和歌山/2018年2月28日更新)