オリジナル体操で介護予防 紀の川市 理学療法士らが考案

 元気にまちを歩く高齢者を増やそうと、紀の川市は医療機関、住民と一体になり、「紀の川てくてく体操」の普及を図っている。ストレッチを柱に全身の柔軟性や下半身の筋力向上に重点を置き、独自につくった体操で、介護が必要な状態に陥るのを防ぐのが狙いだ。同市高齢介護課の田村隆明さん(36)は「2025年までに市内100ヵ所に体操拠点を設け、出歩けない人を生まない地域に」と意気込む。

 「次は腰痛を防ぐ、ももの筋肉を伸ばす運動です」。貴志川町上野山地区の集会所に週1回、約30人の住民が集まる。うつぶせになり腹筋を鍛える運動、リズムを取りながら腕を大きく振り、ももを上げる運動。一見、ハードだが、楽しそうな笑い声が集会所に響く。金丸節子さん(75)は「片足立ちができるようになり、歩くときのバランスが良くなった。家でもできるので、寝る前に自分でやるようにしてから腰痛が軽くなった」と喜ぶ。

 国は06年の診療報酬改定で、医療保険を使ったリハビリに制限をかけ、15年には介護度の低い要支援者の通所介護や訪問介護を市町村の事業とした。これを受け、25年に高齢化率が現在の30%から34%に上がると想定される同市でも、リハビリが受けられない人が増えるとの懸念が出ていた。

 15年7月、貴志川リハビリテーション病院の理学療法士、原井祐弥さん(31)らリハビリ専門職数人が、医療保険や介護保険を使わず、シニアに自立した生活を送ってもらう手助けができないかと市に相談。名手病院も加わり、独自の体操をつくろうとまとまった。

 体操は原井さんが考案。和歌山県内では有酸素運動が特色の「わかやまシニアエクササイズ(ワダイビクス)」があるが、てくてく体操は痛みがある人や歩行に押し車やつえが必要な人でも挑戦しやすいストレッチが中心。道具はいらず、市民の要望を受けて体操をつくり替えるのが特徴だ。

 リズム体操や、股関節をしっかり曲げて体重をかけるストレッチ、腹式呼吸などがある。原井さんは「転ばないことをテーマにしました。まずこの体操で慣れ、ワダイビクスのようなトレーニングもできるようになれば、趣味や生きがいを失わず、人生の選択肢を増やせます」と話す。

 市は15年に普及を図り始め、現在は51ヵ所で約900人が参加する。昨年6月に始めた上野山地区の区長、森伸一さん(70)は「定期的に集まることで、住民同士のつながりが生まれた。災害時にも助け合える足がかりにできれば」と期待する。

 市は年1回、拠点ごとに体力測定を行っている。過去2年の測定では、立ち座りやバランス能力の向上が見られたが、筋肉量の維持向上に課題が残った。また、参加者からももっと運動量の多いものを求める声が挙がり、昨年11月にメニューを改訂。全身の筋肉により負荷をかける、動きの大きなストレッチ、リズム体操を増やした。

 原井さんは「顔を合わせる楽しさから、明るくなったと答える人が多くいる。心身ともに元気なシニアがあふれるまちに」と描いている。

 同市高齢介護課(0736・77・0980)。

写真=リズム体操する上野山地区の参加者

(ニュース和歌山/2018年3月24日更新)