修験者が険しい山を駆け、谷を飛び越えていった。紀伊半島を大いなる曼荼羅ととらえ、母なる大地にあって、自らを厳しく修し、験(ため)しを得たという。こうした山岳宗教は、死後生まれ変わる、過去、現在、未来の三世救済の信仰があり、大自然と人の精神が美しく共鳴している。
滝名の由来は不明。7000万年という気の遠くなる時間を経て、はるか大洋で造られた地質が隆起してできた。大きく蛇行した渓谷の馬背に当たる部分に滝はある。それは、こうした永遠の時と、一瞬の地殻変動によって生まれた。
滝は、紀伊半島という大地の輪廻転生を表出した姿だとすると、修験の滝と命名したのもうなずける。那智の滝と同じ、見事な三条の滝だ。
(ニュース和歌山/2018年8月4日更新)
大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。