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 市堀川沿いの手作りマーケットや、内川をまちづくりに生かそうと呼びかける「ミズベリング和歌山」の発足など、水辺を中心市街地の個性として見直す動きが出てきています。今回は、内川に背を向けて建つ飲食店が多い中、川の景観を見事に生かした3店を紹介します。週が明ければ3月、春はもうすぐそこ。水辺で春の訪れを感じてみませんか?

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 「川ろうぜ! 川る仲間カモン!」を合い言葉にするミズベリング和歌山の活動が活発だ。ミズベリングとは、2011年に河川使用の規制が緩和されたのを受け、水辺をもっと楽しめる場にしようと国土交通省が全国へ呼びかけるプロジェクト。川岸にカフェを造ったり、マーケットを開いたり、カヌーを浮かべて遊んだり…。無限の可能性を官民で模索し、川をまちの資源と見直してまちづくりに生かす。ミズベリングの輪は東京、大阪、広島、長崎と全国へ広がっている。

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 ミズベリング和歌山は昨年10月に発足。建築士やクリエイター、化学メーカーの経営者らを中心に、仲間を増やそうと様々なイベントを展開中だ。昨年末は市堀川の景観を生かしたリノベーション物件を見学し、川沿いの遊歩道を散策するフィールドワークを、今年2月は映像ジャーナリストのサイモン・ワーンさんを招き、紀の川、内川の観光資源としての可能性を語り合うイベント(写真)を行った。

 今後は市民で川の楽しみ方を探り、和歌山の未来を創造する「ミズベリング和歌山会議」を開く計画。普段何気なく見ている川も見方を変えれば観光資源になり遊び場になる。水辺のムーブメントが始まっている。

寄合橋のたもとの隠れ家 くらら

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 市堀川に架かる寄合橋のたもとに、静かにたたずむレンガ造りの居酒屋「くらら」。建物好きのオーナー、宮川慶子さんが20年前、友人の建築士とこだわり抜いて造った店だ。開業時から変わらない石壁にチーク材の家具、店内に流れるジャズ…。しっとりとした大人の雰囲気が漂う。

 バーカウンターとテーブル席が並ぶ1階は、西側に大きく窓が取られ、寄合橋のアーチが目前にせまる。川面と同じ高さの地下1階は、5人以上から利用できる1日1組限定の完全個室。壁一面の窓は水面にほど近く、船上で食事しているかのように錯覚する。「川の流れを見ると落ち着くのか、窓辺でくつろぐお客様が多いです。春は向こう岸に並ぶ桜が彩りを添えます」と宮川さん。

 手作りの果実酒にワインやビール、日本酒に加え、食事メニューも豊富だ。ふわふわチーズオムレツにビーフシチューと宮川さんの洋風家庭料理が心をほっこり温める。

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 日が暮れると、外壁にネオンの灯りがともり、橋がライトアップされる。南海和歌山市駅に近く、ビジネスホテルが多い土地柄、東京や大阪からのビジネスマンも訪れる。宮川さんは「都会から来た方には、この寂れた橋と川の雰囲気が珍しいようで、よくほめてくれます。『水の都、ベネチアみたい』とも言われますよ」とほほ笑む。

くらら 所在地:和歌山市寄合町50
営業時間:午後5時〜11時
休日:日曜・祝日
電話: 073・432・0320

昭和が香る純喫茶 浜

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 京橋から東へ50㍍。創業1958年の純喫茶「浜」はぶらくり丁アーケードから1本南の通り沿いに店を構える。マスターの松井哲豪さんの父、正男さん(故人)が終戦直後、この場所に食堂を構えたのが始まりで、年季の入った木彫りの装飾や並んだレコードのジャケットが〝昭和〟を感じさせる。

 奥にある窓辺の席は内川を望める特等席。「条件がそろうと川面がキラキラと輝くんです」と松井さん。干潮になれば西(海側)、満潮になれば東へと流れが変わり、流れに対し逆風が吹くと川面が立つ。「その瞬間に太陽の位置が良ければ輝きを見ることができます」

 窓の外の景色は街の歴史と共に変化してきた。高度経済成長期には工場や家庭の排水が流れ、川底にはヘドロがたまり、「当時は臭いを我慢してコーヒーを飲んでいました」。対岸の料亭からはにぎやかな声が漏れ、牡蠣(かき)が食べられる屋形船が浮かぶなど川周辺はにぎやかだった。「あのころは窓の真下まで川が流れていました。今は遊歩道が整備され、水も本当に美しくなった。たわむれる水鳥や水面を揺らす魚を見ていると和みます」と喜ぶ。

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 時代と共に変化する街の風景とは対照的に、店内は昔ながらの雰囲気を留める。なじみの常連が足を運び、気心の知れた仲間が集まる憩いの場だ。松井さん自身、窓辺の席に座ることが多く、「落ち着いた雰囲気の川を眺めていると、昔を思い出します」。ただ座ってぼーっと景色を眺める。ゆったりと時間を過ごしていると、ふとあの頃の和歌山にいる気がする。

写真=メニューはコーヒーやトーストなどシンプルだ

純喫茶「浜」所在地:和歌山市雑賀町133
営業時間:午前7時〜午後6時
休日:日曜・祝日
電話: 073・422・7843

表情変える川面を眺め1杯 rogé

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 南海和歌山市駅近く、コンクリートの外観がひときわ目を引くスタイリッシュなイルマビル1階で、夕方から深夜にかけて灯りをともすバー「ロジェ」。市堀川沿いの角地に立ち、店内奥、一面ガラスの窓からはゆったり大きく流れる川が心に安らぎを与えてくれる。川面は街を柔らかに染める夕日の色から、次第に夜闇に溶け込む漆黒に表情を変え、雄橋と伝法橋を行き交う車のライトの反射がきらめく。

 1998年、鈴丸で開業し昨年、この場所に移転した。「やはり窓からの景色がいいですね。西向きの窓で橋が見え、夕暮れがきれい。特に3月と9月は雄橋の中央に夕日が落ちます」とマスターの三木健司さん。

 ウイスキーのボトルやグラスが美しく輝き、所狭しと置かれた観葉植物に北欧製のインテリア、ほのかな間接照明と心地よい音楽が楽しい夜を演出する。こだわりのウイスキーにワイン、ビールに自家製の肴(さかな)の数々、香り高いコーヒー、赤ワインに合うケーキとメニューも多彩で、夜がふけるにつれ店内はにぎやかな雰囲気に包まれていく。

 カウンターとテーブル席があるが、景色をゆったり楽しむなら窓の一番近くに設けたソファへ。グラスを傾けゆっくり一日の疲れをいやすひとときに、川はそっと寄り添っている。

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バー ロジェ 所在地:和歌山市元博労町55
営業時間:午後5時〜深夜2時
休日:日曜
電話: 073・433・6691

(ニュース和歌山2015年2月25日号掲載)