紀美野町の仏師 村井照念さん
手を合わせると、首が回る仏像!? 木彫り教室を開く紀美野町の仏師、村井照念さん(80)が機械で頭が動く「自我如来像」を完成させた。9月14日(金)~16日(日)に海南市日方の市民会館で開く教室作品展で披露。「古くから伝わる仏像も、時代と共に変わっていく。〝平成の仏像〟として、若い世代にも興味を持ってほしい」と話す。
大阪府岸和田市出身の村井さん。35歳の時に趣味で仏像彫刻を始め、産業用ロボット製作会社を経営しながら、京都仏像彫刻研究所で人間国宝の故松久朋琳さん、宗琳さん親子に師事した。
還暦を機に娘が暮らす和歌山へ。仏像と背景の装飾を手彫りし、寺へ販売するほか、紀美野町、海南市、岸和田市で教室を開き、分厚い板に描いた絵を立体的に彫り出すオリジナルの「紀州彫り」を約60人に指導する。
自我如来像は、宗琳さんの「既にある仏像の模倣だけでなく、自らの作品を創造するように」との教えから。約1年かけて1本の楠から像を彫り出して内部をくり抜き、ロボット製作で培った電気回路や機械を扱う技術を勉強し直して、1ヵ月がかりでモーターや配線を埋め込んだ。
足元にセンサーがあり、手をかざすと機械が動く仕組み。額のLEDライトが光り、頭が左右にゆっくり動くと同時に、「像は見る人自身の姿。右を向くと過去、正面は現在、左は未来を見つめます」と解説が流れる。
「自らを振り返り、未来を見つめる機会を持ってもらい、『自分に厳しく、他人に優しく』という〝自厳他優〟の精神を伝えます。次は紀州彫りで知人などの似顔絵を作りたい」と意欲を燃やしている。
作品展にはこの像のほか、生徒の作品を含む約80点が並ぶ。午前9時~午後5時(最終日4時)。川嶋さん(073・489・2417)。
(ニュース和歌山/2018年9月8日更新)