国連の専門機関の一つ、国連世界観光機関(UNWTO)のトップを務めるジョージア人のズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長(41)が9月19日〜25日に来日。永田町訪問や要人との会談の合間を縫って、和歌山市内のとある個人宅に立ち寄った。ズラブさん自身のたっての希望で訪れた、その理由とは──。
世界観光機関トップのズラブさん〜14年ぶり福本さんと再会
ズラブさんは、ジョージア最大のTBC銀行中央支店で働いていた2004年、国際協力機構(JICA)が実施する研修に参加した。同郷の仲間と来日し、地方プログラムで和歌山を訪問。その際、国や和歌山県による海外派遣事業のOBでつくる海友会の歓迎を受け、和歌山城を見学し、蒔絵を体験した。
その時、ホームステイしたのが、今回訪れた同市塩屋の福本欣弘(よしひろ)さん(54)宅だった。同郷の大相撲力士、黒海と東京で会ったことを話すと、和歌山県相撲連盟で活動する元アマチュア力士の福本さんは和歌山県営相撲場へ案内し、稽古の様子を見学させてくれた。また、地元青年と遅くまで酒を飲み交わし、故郷や将来について語り合った。
福本さんの妻、由加里さん(56)は「焼き魚や鍋料理など、できるだけ日本の家庭料理を作りました。幼い娘たちはズラブさんの膝に座り、遊んでもらっていましたね」と振り返る。
ズラブさんは帰国後、同国の外務次官になり、大使としてスペインへ赴任。今年1月には、観光分野で世界唯一の国際機関、UNWTOのトップに就任し、観光政策に関する意見交換や技術協力などで加盟158ヵ国を引っ張る。
今回、2度目の来日に際し、「日本で一番思い出深かった」と和歌山行きを熱望。奈良から紀南へ向かう道中、わずか2時間ながら福本さん宅に立ち寄った。福本さん夫婦から、当時の写真をまとめたアルバムと、紅白の綱が飾られた相撲の置物を受け取ると、感激した様子で懐かしそうに写真を眺め、思い出話に花を咲かせた。
由加里さんは「2泊3日という短い間のことを14年もの間覚えてくれていたことに感動しました」、欣弘さんは「互いに歳を重ねましたが、手土産を用意するなど彼らしい気遣いは同じでした」とにっこり。
ズラブさんは「当時、家庭的な温もりの中で、懸命に歓待してくれたことが印象深かった。言葉や文化が違っても、気持ちで分かち合えた経験は、他国の歴史や文化を尊重しあう今の仕事に生かされている。和歌山での経験は、財産として今後も大切にしたい」と話していた。
写真上=福本さん(右)と固い握手を交わすズラブさん、同下=14年前、福本さん一家と
(ニュース和歌山/2018年9月29日更新)