食べることを大切にする──。その思いを貫く和歌山市屋形町の「イタリア食堂たぶち」が10年目に突入した。旬の食材を使った料理、そしてベーコンやハム、ツナなどを手作りする手間を惜しまない姿勢が客の心と胃袋をつかむ。オーナーシェフの田渕浩さん(49)に思いを聞いた。
旬を感じる店
──食欲の秋です。
「今の季節ですと、『サンマのプッタネスカソース』や『秋鮭とキノコのクリームソース』が常連さんには人気です。『この店で旬を感じる』と言ってくださいます」
──うれしいほめ言葉ですね。
「魚介類や野菜はできる限り、地産地消にこだわり、カルパッチョに使うタイ、イカなどはほとんど雑賀崎で水揚げされたもの。イカスミパスタは雑賀崎のマイカがある時にしか提供しません。マイカは例年、10月の終わり〜2月ですから、間もなくです。今春からは岩出市で栽培される黒アワビ茸をパスタやアヒージョに使っています」
──メニューを見ると、「自家製ベーコンの温玉乗せカルボナーラ風」「自家製ツナとキャベツのトマトソース」など〝自家製〟の文字が躍ります。
「ソーセージにハム、ドレッシング…。自家製でないのは生ハムぐらいでしょうか。ベーコンなら、塩をし、その塩を抜き、乾燥させながら熟成させ、くん製にし…とざっと2週間かかります」
──手間を惜しまないんですね。
「それが当たり前だと思っているんで、しんどいとも手間とも思いません。飽きずに毎日食べられる、体にやさしい味付けで提供したいと考えていますから、全て手作りです。そんな気持ちを込め、店名はイタリア〝レストラン〟ではなく、〝食堂〟としたんです」
低糖質のデザート
──出身は。
「東大阪市です。高校卒業後、レストランや喫茶店、パブなどを持つ大阪市の会社に入り、様々な業態の店で調理を担当しました。5年半が経ったころ、一つのジャンルを専門的に勉強したいとの思いを抱き、和歌浦にあったイタリアンとフレンチの店から声を掛けていただきました。フランスの三つ星レストランで副料理長を務めた方のお店で、その方の下で35歳まで腕を磨きました。その後、和歌山市のイタリアン、バベーネへ。40歳を迎え、最後のチャンスと独立したんです」
──店を構え、10年目に突入しました。
「体調がすぐれないときは添加物に対し敏感になるんでしょうか。調子の悪いお子さんや妊娠中でつわりのひどい女性から、『ここの料理なら食べられる』との言葉をいただいたことも。また、一般的な同じ商品と比べて糖質を約1割に抑えた低糖質デザートも人気です。私の思いはシンプルで、〝おいしいものを安全に作りたい〟、それだけです。これまで通り、食べることを丁寧に考えていきます」
写真=黒アワビ茸入りボロネーゼソース(ランチはドリンク付きで980円)
【イタリア食堂たぶち】
和歌山市屋形町4-14-2 レオヤカタ1階
昼=11:30〜14:15
夜=18:00〜21:00 ※夜は予約が望ましい
日曜休み
☎073-427-2258
(ニュース和歌山/2018年10月10日更新)