和歌山城にほど近い和歌山市雑賀屋町の洋菓子店、ケイト・シィは独自で養蜂に取り組み、9月から自家製蜜を商品に取り入れている。江戸時代からの産地で、今も国内2位のハチミツ生産量を誇る和歌山から、日本古来の養蜂を発信する試み。オーナーの竹田ミレーさんは「東京や大阪など都市部でも養蜂が増えている。今は海南で行っているが、将来はお城という豊かな自然がある和歌山の街中で広げたい」と描く。
古式養蜂で日本ミツバチ育てる〜洋菓子店ケイト・シィが挑戦
養蜂が本格的に行われ始めた江戸時代、現在の有田市にいた貞市右衛門が日本ミツバチの養蜂に成功し、国内随一の生産量を誇った。今は和歌山を含む全国で西洋ミツバチが主流になっており、中でも紀中、紀南を中心に514軒、巣箱1万3030個ある和歌山は長野県に次ぐ全国2位(2017年)の産地として知られる。
この蜜に着目したのが同店スタッフ。自家製蜜を使ったオリジナル菓子を生み出し、日本ミツバチの養蜂を広めようと昨年、県に巣箱の設置を申請し、海南市の山地にある寺で養蜂を始めた。
古い巣やハチミツがある所にすみ着く習性を利用し、空の巣箱にこれらを入れておいたところ、日本ミツバチの群れがすみ、1年間で約2万匹が出入りする巣に成長した。途中、台風や猛暑の影響で数を減らしたこともあったが、巣を壊す蛾(が)の幼虫を駆除し、巣箱の中の掃除を欠かさず、着実に数を増やしている。
「蜂の数が増えるにつれ、巣箱となる約30㌢角の重箱を1段ずつ足す古式養蜂。日本ミツバチは温厚で、世話する人間の体臭を覚えているのか、手に乗ってくることもあります。同じ場所で蜜を取り尽くさないため、取り合って争うことがありません」と竹田さん。
現在、養蜂の主流は西洋ミツバチだ。日本ミツバチは西洋ミツバチの6分の1程度しか蜜を集めず、出荷できる量が少なくなるためだが、蜜は収穫するまで時間がかかる分、巣箱の中で熟成され、味が濃厚で高級品として扱われる。
今年8月、初めて収穫した3㌔の蜜を同店のカヌレ生地に混ぜ、蜜ろうを塗った型に流し込んで焼き上げた。9月に販売を開始。早速購入した有田市の塩月まゆさんは「まず香りが良いのが印象的。蜜自体の味がくどくなく優しくて、一口ごとに奥深い味わいがある。希少な日本ミツバチの蜜を味わえるのも珍しく価値がある」とにっこり。竹田さんも「パリッとした表面の食感は蜜ろうならでは。少量でも風味があり、ムースやケーキにも使える」と手応えを感じている。
京都を中心に近畿の養蜂家が集まるグループ「週末養蜂家のニホンミツバチのおいしいはちみつ」のメンバーは「ビルの屋上で育てる都市養蜂が増え、趣味の養蜂は広がりつつあります。洋菓子店が養蜂に取り組む例は珍しい」と話す。
今後、同店は和歌山市内のホテルと連携し、市街地での養蜂も検討中。竹田さんは「スズメバチなど天敵が少なく、お城、公園とまだまだ自然が多い市街地は育ちやすいはず。蜂が飛んでいるところは良い環境の証。庭先養蜂が市民に広がり、減少した日本ミツバチの保存につながれば」と望んでいる。
写真=「濃厚な味と風味が特徴です」と竹田さん、同下=数が増えた蜂と同店スタッフ
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同店スタッフが指導するワークショップ「庭先養蜂のすすめ」が10月21日(日)午前10時、和歌山市吉原の安原小吉原分校で開かれる。無料。小3以上対象。カラバティー(073・460・2412)。
(ニュース和歌山/2018年10月13日更新)