9月に和歌山を襲った台風21号はすさまじいものでした。台風があんなに怖いとは思わなかったというのが実感です。今もブルーシートの家が目立ちます。工事が来年にかかる所も多いそうです。

 さて、私の家も被害に遭いました。屋根のスレートが飛び去り、屋根裏から見ると、広範囲で空がむき出しになりました。当日夕方、雨水が滝のように2階の部屋に流れ込んでいるのに気付き、家族2人で天井裏にたまる水をスポンジで吸い上げ、バケツにためては捨てる作業を全身ずぶぬれになりながら夜中の2時まで続けました。天井の石こうボードは水を蓄えて垂れ下がりました。

 最初の1週間、屋根が高いためすぐにはシートがかけられず、不安に思った私は消防に相談しました。その後も雨続きで、雨の度に天井裏に入り、水を吸い上げるのはへとへとで、身体がもたないと感じたのです。事情を説明すると、道に家が倒れるなど他に迷惑をかけないなら出動はできないとの返事でした。

 「このまま自分たちが倒れるようなことがあっても対応してもらえないか」と聞くと、喫緊で命にかかわる状況でないと難しく、はしご車を使ってもらったら一瞬で…というのは甘かったようです。

 最後に少し納税者意識をかざし、「市民の生命と財産を守るとホームページにありますが…」と食い下がりましたが、「ボランティアか、対応してくれる県外の業者を探されたら」との言葉でした。

 線引きがないと、対応の基準が程度の問題になり市民に不公平感を募らせてしまうでしょう。しかし、私は被災の現実を感じました。私らはまだ動けるから良いものの、これが高齢だったら、病人がいたら、どうなったでしょうか。考えておくべきは2点です。

 ひとつは災害の際を想定し、自助努力の基礎体力を上げておかねばならないということです。備えはむろん力になりあえる関係が地域に必要です。私自身も相談に乗ってくれる方、協力頂ける方の励まし、温かい言葉が頑張る原動力になりました。

 そのうえでもう一点、先の自民党総裁選でも災害対応専門の省庁が話題になりました。「一人ひとりの命をいかに守るか」を国民の目線に立ち、仕組みを育てる努力は行政側に欠かせません。被災状況は個別で具体的です。そこに共にどう向き合えるかを考えるのは「生命と財産を守る」をうたう側の責務でしょう。

 災害の怖さが身にしみる年です。のど元すぎたらでなく、この経験を地震の備えにつなげたいです。 (髙垣善信・本紙主筆)

(ニュース和歌山/2018年10月13日更新)