千年の都、京都で培われてきた「京料理」。先人の知恵と工夫が詰まった京料理の懐石を専門にする県内では珍しい店が「御料理 伊とう」(和歌山市田中町)だ。店主の伊東大輔さん(46)は京懐石と日本酒を味わう「美和の会」、ワインと楽しむ「和とワの会」を年4回開き、今月からランチを始めた。「京料理を気軽に味わい、酒との組み合わせも楽しんで」と語る。

素材引き立てる調理

──京料理とは。

 「出汁で素材本来の味わいを引き立てるのが基本で、味、見た目、雰囲気など五感で楽しめるよう作り込みます。味つけの命である出汁は、6年物の利尻昆布を取り寄せ、メーン料理の煮物椀にだけ一番出汁を使います。カツオ節やマグロ節も組み合わせ、具材が野菜の場合は香りが残るよう優しい味わいのマグロ節を選びます。食材は、夏は下津の戸坂漁港で揚がるハモ、冬は加太の鯛と、なるべく地元産を使います」

──修業はどのくらい。

 「高校卒業から12年間です。実家が和歌山市の宅配弁当店で、料理人を志して京都の料亭に就職。教えてもらえない世界で、仕事をしながら横目で先輩の技を盗むんです。閉店後、夜遅くに厨房で先輩の仕事を真似て腕を磨きました」

地酒、ワインと

──こだわりは。

 「『粋な大人が集う空間』を目指し、料理に加え、食器や掛け軸など細やかなしつらえにも気を配ります。食器は江戸時代のものや名のある作家の器を使い、秋は稲穂や紅葉、お祝いの宴席では鶴や松などめでたい蒔絵の器で出します。掛け軸も同じく季節や席の種類に合わせます」

──京懐石と日本酒が味わえる美和の会を約10年、続けています。

 「豊富な種類の日本酒を料理と一緒に楽しんでもらおうと年2回開きます。コース料理で6種類のメニューを順に出し、それぞれの料理に合う日本酒を用意。酒蔵様から杜氏らをお招きし、酒造りのこだわりやおいしい飲み方を聞きます。ワインで楽しむ『和とワの会』も年2回開いています」

──酒蔵は地元ですか。

 「そうですね。過去に世界一統様、平和酒造様、今は中野BC様や名手酒造様に来ていただいています。事前に数種類の酒を送ってもらい、相性の良い料理を考えます。すっきり、優しい味わいの純米酒には、向付や煮物椀、フルーティーで芳醇な吟醸酒は、油ものや焼きものを合わせます」

──懐石料理に加え、ランチを始めました。

 「かき揚げ丼御膳(1800円)とうな茶御膳(2000円)の2種類あります。うなぎ茶漬けは京料理の一つで、県産の実山椒と共に甘辛く煮付けたうなぎに、出汁で入れた玄米茶を注ぎます。食べて満足するだけでなく、大切な人との時間、空間を楽しむ京料理の良さにふれてもらい、広めてゆきたい」

写真=昼のミニ懐石(3500円)

【御料理 伊とう】
和歌山市田中町5-4-6
11:30〜14:00、17:00〜22:00
日曜定休。夜・昼の懐石は要予約
☎073-426-0934

(ニュース和歌山/2018年10月24日更新)