〝いたちそば〟なる食べ物をご存知? うどんの出汁に中華めんを入れ、甘く煮た油揚げを乗せためん料理で、近畿地方では「黄そば」と呼ばれることが多いが、海南市の一部ではこの独特な名前で親しまれている。インパクトのある名前に着目し、新たなB級グルメとしてまちおこしにつなげようと、海南商工会議所青年部が模索を始めている。
海南商工会議所青年部 新名物へ取り組み中
同市日方にある「お食事処・呑み処一休」。昨年5月、メニューに〝いたちそば〟を加えた。「知っている人もいれば、『いたちそばってどんなそば?』と聞いてくる人もいますね」。出し始めたのは、海南商工会議所青年部メンバーから教わったのがきっかけだ。
昨春、青年部メンバーが集まった際、池原弘貴会長がいたちそばを話題にした。黒江で漆器店を営む池原会長は「40年ほど前は川端通りを少し入った路地に、うどん屋さんが5軒ほどあった。今は全て閉めてしまいましたが、これらの店ではうどん、そばのほか、〝いたちそば〟もメニューにあったんです」。
なぜこの名前になったのか定かではないが、青年部理事の北方英司さんは「あげをのせたうどんが〝きつね〟、黒そばが〝たぬき〟なので、同じく化けるとされる動物で〝いたち〟になったのでは」と話す。
うどん出汁に中華めんのコンビで出されるこのそば、学食のメニューにある高校もあり、知っている人は少なくない。ただ、〝いたちそば〟との名前は海南市内でも聞いたことがない人は多く、青年部の集まりに参加していた約10人中、「知っていたのは半分もいませんでした」と北方さん。
同じ海南市内でも、海南駅前で1922年から営業するみき乃やでは、かつて〝パンダ〟の名前で常連客がよく注文していたそう。「50年ほど前にはあったはずです。中華めんを入れるからパンダなんだと思います。メニューには書いていませんが、今もこの呼び方で注文される方がたまにいらっしゃいますね」
〝黄そば〟〝黄ぃそば〟〝パンダ〟などと呼ばれるこのめん料理。池原会長が以前、関東地方で開かれた会合で、海南では〝いたちそば〟と呼ばれていたと紹介したところ、知人たちが料理名のインパクトに食いついてきた。「海南のB級グルメとしてPRしていけないか?」とひらめいた。
昨年5月、メニューにいたちそばを加えた店がもう1軒ある。国道42号沿い、毛見トンネルすぐ南の十圓屋だ。もつ焼きと煮込みが中心の大衆酒場で、「飲んだ後にしめで注文される方のほか、いたちそばだけを食べに来られる方もいますね」。店のフェイスブックなどで「海南黄そば推進委員会」を自称し、中華めんを使った他のメニューと合わせてアピールする。
一方、青年部はPRのため、昨年11月3日の紀州漆器まつり、4日の家庭用品まつりで模擬店を出した。2日合わせて500食が完売する人気だった。今後も海南市内でのイベントで周知を図る計画で、北方さんは「毎月、ぶらくり丁で開かれているポポロハスマーケットなど、市外でも知ってもらえる機会を設けたい」、池原会長は「海南を訪れた人が食べ比べできるほど、提供してくれる店が増えてくれれば」。
いたちそば名物化計画の今後に注目だ。
写真=油揚げのほか、かまぼこ、天かすを加えた一休のいたちそば。男性客に人気だ
(ニュース和歌山/2019年2月16日更新)