昔、熊野参りのときは和讃や御詠歌を歌って歩いた。ある日、巡礼の女が滝の前で歌っていた。歌に気づいた盗賊が近づき、切りつけて金を奪って淵に投げこんだ。死体は穴に吸い込まれ、二度と浮かんでこなかった。

 話を聞いた村人が、供養になればと「紀伊の国那智山 ふだらくやしきうつなみはみくまのの なちのおやまにひびくたきつせ」と詩歌を歌った。すると、いきなり滝壺から、白装束の女が現れた。
 また、この滝で鰻を取ると次から次に鰻が現れ、取り尽くせないうちにあたりは真っ暗となり、滝の周りだけ大雨が降ったという。

 別名、巡礼滝。この滝で、決して歌ってはいけない。歌うとオヒメサンが出てくると、今も伝わるのだ。

(経路…国道311号から武住谷川をさかのぼる)

(ニュース和歌山/2019年2月23日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。