第91回選抜高等学校野球大会
智辯学園和歌山高等学校 和歌山市立和歌山高等学校 出場記念特集
キラキラした目 いつまでも 日本高野連・竹中雅彦事務局長が語る
かつて、野球はダントツの人気スポーツだった。第100回となった昨夏の甲子園大会には過去最高の101万人が来場。だがその一方、野球に親しむ子どもは加速度的に減少する。野球の未来を見据え、魅力をどう伝え、球児の健康をどう守り、どう将来につなげるか。日本高校野球連盟の竹中雅彦事務局長が「高校野球200年構想」で掲げた改革に言及する。
写真=昨年夏に行われた、第100回全国高校野球選手権大会開会式の様子
野球離れに危機感
甲子園が満員でも、意識して触れる機会を増やさないと野球離れに歯止めがかからない。危機感は大きいのです。「普及」「振興」「けが予防」「育成」「基盤作り」を柱に「高校野球200年構想」を策定、昨年から実際に動いています。
幼稚園や小学校には、野球の入口となるティーボール用具を寄贈。高校生が小学生や中学生を指導する教室も始めました。プロは学校教員向けに野球教室を開き、世界野球ソフトボール連盟はベースボールファイブという手打ち野球を推進中。魅力を知ってもらうため、あの手この手を繰り出しています。
ケガ予防へ対策を
実際に野球を始めると、次はケガが問題。ヒジを痛めて続けられなくなる子がいますから、甲子園では昨年から延長戦でタイブレークを導入し、今年は休養日を増やします。
そんな中、最も議論に上るのは、球数制限。新潟が、この春の県大会から導入する意向を示しました。高野連としては、制限方法をもっと詰めるべきと考えますが、問題はそれだけ切実。新潟が投じた一石を無駄にしてはいけません。4月に医師や他スポーツ関係者も交えた投手の障害予防に関する有識者会議を立ち上げ、対策を考えます。
また、健康を管理する野球手帳を小学生から持ってもらいます。中学、高校、大学、プロや社会人と活動の場が変わってもヒジなどの既往歴が分かるようにし、練習や治療に生かしてもらう考えです。
指導者も意識改革
近年は、球児を取り巻く環境が変わりつつあります。各年代や軟式、硬式に団体があり、別々に動いています。これらをまとめる協議会の設置を促しています。和歌山も2月に発足し、意見を交換しました。
指導者も変わらないといけません。2008年から甲子園塾と名付けた指導者講習会を開き、技術面に加え、指導者のあり方も学んでもらっています。特に、暴力撲滅は重要課題。野球を選んでくれたことを感謝すれば、体罰なんてとんでもないのです。
私は昨年、高校日本代表が小学生を指導した時、子どもたちの目がキラキラしていたことが忘れられません。あの子たちがずっと野球を続け、また、一人でも多く野球に親しめる形を作りたい。それが、新しい時代を前にした私たちの責務です。
竹中雅彦(たけなか・まさひこ)…1954年生まれ。桐蔭高で軟式野球部、成城大で硬式野球部に所属。教師となり、新宮高、星林高で野球部長を務め、96年から県高野連理事長。2013年から日本高野連事務局長。和歌山市在住。
(ニュース和歌山/2019年3月16日更新)