読者の皆さんから寄せられた地元・和歌山に関する疑問・質問を、編集部が調査し、お答えする「和歌山謎解き代行社」。今回は和歌山市のY・Tさんから届いた「『紀ノ川』と『紀の川』、どっちなの?」です。

 橋のたもとには「ノ」、川名の看板には「の」、地図は種類によって両方。駅名は「ノ」とばらばらです。ひらがなの「の」とカタカナの「ノ」、どちらが正式名なのでしょうか?

 2つに隠された謎と歴史を、戦前にさかのぼり解明します。

 


 

1965年からは「の」が正しい

 「『紀ノ川』と『紀の川』、どっちが正式名?」。まずは和歌山県河川課で聞きました。

 「戦前、法律や公文書は漢字とカタカナの文語体が用いられ、『紀ノ川』と表記していました。戦後は、常用漢字とひらがなの口語体が用いられて『紀の川』になりましたが、その後も何度か告示内で『紀ノ川』と記載されており、混在している状況でした」

 この混乱に終止符が打たれたのは1965年。一級河川に指定されたのをきっかけに、表記が「紀の川」に統一されました。

 一方で、カタカナを貫くのが南海電鉄「紀ノ川駅」です。広報課の山本明子さんは「1903年にできた『紀ノ川駅』はずっと『ノ』。当時の駅名は、磯ノ浦、西ノ庄など、全て『ノ』になっています」。

 これで一件落着と思いきや、第3の刺客、「之」の登場です。和歌山市立紀之川中学校の「之」は、記録は残っていませんが、学校関係者によると、校区である中之島の「之」を採用したのではないかとのことです。

 表記が時代にほんろうされつつも、紀の川はきょうも雄大に流れ、豊かな生活を支えてくれています。

(ニュース和歌山/2019年4月20日更新)