肢体障害がありながら、仕事や読み聞かせ活動などに打ち込む和歌山市のたかだゆき子(髙田友紀子)さん(23)が4月19日、児童文学作家デビューを飾る『やさしい きもち』と『はじめての うみ』を出版した。「理不尽なことで傷つけられることもあるが、優しい気持ちで頑張って生きれば、きっと助けてくれる人が現れる。この本で健常者との壁をなくしたい」と望んでいる。

肢体障害のたかださん初出版

 双子で生まれ、低体重のため障害が残ったゆき子さん。幼少期から母親が読んでくれる絵本が楽しみで、ページごとに印象的なことをよく語り合った。成人後は病院で作業療法士のアシスタントとして働くかたわら、読み聞かせグループに参加。今年1月からは個人でも月1回、「ゆっこりんのおはなし会」を開き、今回、夢だった絵本の出版を実現させた。

 『やさしい きもち』は、日ごろ感じている健常者との壁と、その中で見つけた優しさを表した。猿たちがウサギからクッキーを取り上げ、「登ってくればよい」と木の上で食べてしまう。仕方なく熊とアップルパイを作ったウサギだが、再び猿が現れる。熊にしかられる猿たちを前にウサギは「クッキーがほしかったんじゃない。優しい気持ちで仲間に入れてほしかった」と打ち明ける──。

 『はじめての うみ』は昨夏、磯の浦海水浴場で経験した人生初の海水浴が題材。砂浜にマットを敷き、水陸両用車いすで海に入った時を振り返り、「海側から見た陸の景色、波しぶき、潮風の心地よさ、いずれも感動ばかり。海は行けない場所だとあきらめていましたが、『生きていれば楽しいことに巡りあえる』と心から思えました」。

 『やさしい~』は40㌻、1620円。『はじめての~』は28㌻、1404円。宮脇書店和歌山店、ツタヤウェイガーデンパークほかで販売。

(ニュース和歌山/2019年5月11日更新)