全国各地のブランド牛のほか、これらをふんだんに使ったコロッケやミンチカツなど惣菜が並ぶ岩出市野上野の松牛は〝ちょっとぜい沢なお肉屋さん〟。湯浅しょう油や地元産みりんで肉ダレも開発し、肉をよりおいしく味わってもらうためにチャレンジを続ける松下隆紀社長(45)の思いを聞いた。
タレへのこだわり
──店内には、きれいな色の肉が並びます。
「扱うのは吟味したA4ランク以上の黒毛和牛のメス牛です。メス牛は脂身が上品で、赤身とのバランスが良いのが特長です。自分の舌で確かめ、納得した肉のみを仕入れています」
──肉以外にコロッケ、ミンチカツ、ハンバーグ…。目移りします。
「人気ナンバーワンはニュー松牛コロッケ(118円)です。肉のうまみと食感をしっかり感じてもらえるよう、色んな部位の肉を使用しています。ホクホクよりも、具材がまとまり、しっとりとした口当たりが特長です。百貨店に出店した時は、1週間で2万個売れました」
──こだわりは。
「自分が納得した素材を使うことです。一般的な相場を考えて素材を決めるのではなく、使いたいものを考えて、値段を決めています。店で扱う松阪牛や熊野牛など黒毛和牛の肉をぜい沢に使っています」
──湯浅しょう油を生かしたコロッケもあるんですね。
「『すき焼き隆喜』(118円)です。肉のおいしさを最大限に引き出すため、湯浅町の丸新本家さんのしょう油と海南市の中野BCさんの宝来みりんを使用した万能調味料『肉だれ隆喜』を2013年に共同開発しました。煮込んだときの肉の匂いや、やわらかさが際立ちます。この調味料を使って糸こんにゃくなどの具材を煮込んだ、すき焼き風味のコロッケです」
──他にも色んなタレがありますね。
「焼き肉、ステーキ、ローストビーフ、焼き豚などのタレを開発し、販売しています。家庭でも肉をおいしく味わってもらえるよう、いずれも丸新本家さんと中野BCさんの商品を使っています。地元産の素晴らしい調味料があることを、肉を通して知ってほしいですね」
岩出で再出発
──創業は50年以上だと聞きました。
「もともと祖父が和歌山市の松江市場で精肉店を営んでいました。自分もその道に進みたいと思い、高校卒業後、鳴神にある老舗精肉店の池田屋で見習いをさせて頂き、牛の解体から卸、接客まで学びました。この後、家業を引き継いだのですが、近所に大型スーパーができ、お客さんの足が市場から遠のき、移店を決意しました」
──なぜ岩出市に。
「目指すのはどの時間帯もお客さんが訪れるにぎやかな肉屋。それを実現するために、地元へのこだわりをリセットし、新天地で開業しました。人口が多い岩出は活気あふれる町。2008年、移店を機に『松牛』と改名しました」
──今後は。
「自分の経験を信じ、おいしい肉にこだわって研究していきます。お客さんの笑顔があふれる店であり続けたいです」
【松牛】
岩出市野上野35-60
9時半〜19時 水曜定休
☎0120・041・291
(ニュース和歌山/2019年5月22日更新)