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 高齢や障害のため外出が難しい人の自宅へ出向き、散髪する訪問理美容。「困っている人の役に立ちたい」と6年間勤めていた美容サロンを辞め、この世界に飛び込んだ若者がいる。訪問理美容ハンズ(和歌山市北町)の石谷真由美さん(26、写真)。「地味なイメージの仕事ですが、お店で働いていた時よりやりがいを感じています」と目を輝かせる。

 「おはようございます。梅の花がきれいに咲いてますね」。石谷さんが元気よくあいさつして訪れた先は、和歌山市の52歳女性宅。女性は17年前に運動神経が侵され、手足に力が入らなくなるギランバレー症候群を発症して以来、ベッドの上で過ごす。13年前から3ヵ月に1回、訪問理美容を利用する。

 ビニールシートを広げ、他のスタッフと2人がかりでベッドから車いすへ移動させる。髪をスプレーでぬらし、後ろ髪のもつれを丁寧に取り除く。手際よく30分で切り終え、最後に「きれいなったでしょ?」と鏡を広げて見せる。女性は「すっきりして気持ち良い。いつも来てくれる看護師さんが、散髪した日は髪型をほめてくれるんです」と笑顔をみせた。

 石谷さんが訪問理美容を志したのは美容専門学校に通っていたころ。両親が共働きで祖母と長く過ごしていたため、「高齢者を支える仕事がしたい」と美容師の免許に加え、ホームヘルパー2級を取得した。卒業後は美容サロンで6年間勤務し、腕を磨いた。カットやパーマ、髪染めなどを1人でできる自信がつき、昨年6月、念願の訪問理美容に転職した。

 利用者は足腰が悪く、外出が難しい高齢者、認知症の人、重度の障害で人工呼吸器をつけている患者ら様々だ。「寝たきりの方や、首の曲がらない方は頭を抱えながらカットするなど難しい面も。でも私が来るのを楽しみに待ってくれている人がいる。そう思えるのが一番のやりがいです」

 石谷さんは、地元の岬町でもサービスを広げようと、チラシを製作し、介護施設のほか、一軒一軒へ配布するなど普及に取り組む。「まだまだ訪問理美容を知らない方が多い。もっとたくさんの人に知ってもらい、笑顔の方を増やしていければ」と力を込める。

 ハンズ(073・455・3595)。

(ニュース和歌山3月14日号掲載)