和歌山県内の滝を訪ね歩き、その魅力をカメラに収める海南市の写真家、大上敬史さん(60)が7月10日㊌〜27日㊏、和歌山市古屋のティーズカフェで作品展を開きます。3月末までの1年半、ニュース和歌山で執筆した連載「わかやま滝物語」から厳選した滝を紹介。今回の「#イマワカtalk」は、大上さんに和歌山の滝の素晴らしさを尋ねます。

 

きっかけはニュース和歌山

──滝を撮り始めたきっかけは。

 「23歳の時、ニュース和歌山で郷土史家の芝村勉先生が書かれた熊野古道についてのコラムを読んだのが始まりです。当時、熊野古道は今ほど有名でなく、地元の人ですら知らなかった。けれど、中には知っている人もいて、案内してもらうと道中に滝がたくさんあるのに気づきました。熊野古道は滝見道と言えます」

──滝の魅力は。

 「古来日本には滝を見る文化がありました。稲作には水が欠かせず、水や滝を信仰の対象とし、畏敬の念を抱いたのです。その代表とも言える日本一の那智の滝が和歌山にあり、県内には名のある滝が400、無名も含めると1000以上あると思われます。和歌山は滝王国なのです」

 

時間超越した感覚

──3月末まで本紙で連載しました。

 「地域の古老に話を聞き、地区の公民館に眠る資料などを調べて執筆しました。滝には、人々が祀ってきた跡や雨乞いなどの風習が残っています。美しい滝は他府県でも見られますが、そこに住む人とのかかわりや歴史はそこにしかない。滝が持つ素朴で、個性的な物語こそ真の魅力です」

──今回、どんな作品を展示しますか。

 「写真10点を並べるほか、滝の動画を上映します。動画は、写真では表現できない刻々と変わる滝の姿、流れる音を伝えられます。滝の前に立つと、思わず見入り、『もうちょっと見ていたい』との気持ちになる。時間を超越する、そういった感覚を体験してほしい」

──思い出深い滝は。

 「古座川町のまぼろしの滝です。その名の通りまさにまぼろし。最初に行った時は水がなく、落差63㍍の滝は姿すら見えませんでした。昔も同じような経験をした人がいて、こうした名前がついたのです。2、3回目は水量が少なくて写真にできず、雨の後に撮りに行くと、さすが那智の滝に次ぐ滝と伝わる通り、立派な滝が撮れました」

──伝えたいことは。

 「20〜30年前までは滝見道が整備され、橋もかけられましたが、近年はそういった文化が廃れ、滝を見る人は減りました。また、2011年の紀伊半島大水害で、林道が崩れて近づけなくなり、形が変わってしまった滝もあります。滝に残る伝説や文化は消えつつある。人々の信仰が滝を支えていたことを感じ、滝を見に行く人が増えるとうれしいですね」

大上敬史写真展「わかやま滝物語」

 7月10日〜27日、ティーズカフェ。午前11時〜午後5時。㊊㊋休み。同店(073・460・4715)。

(ニュース和歌山/2019年7月6日更新)