和大・藤本名誉教授が出版

 30年以上、和歌山市和歌浦中の玉津島神社を研究する和歌山大学名誉教授の藤本清二郎さんが6月25日、『和歌の浦・玉津島の歴史』を出版した。景観や文化の歴史を、政治的背景からひもといた一冊で、「玉津島といえば和歌について書かれた書籍が多いが、異なる視点から見ることで新たな解釈ができる。歴史研究の材料になれば」と望んでいる。

 1988年に起きた和歌浦のあしべ橋建設問題で、反対派として活動した藤本さん。その際、地区や神社の歴史を調べるため、神社に保管されていた古文書を見せてもらったのをきっかけに和歌浦の研究を始めた。

 3年前、『万葉集』の研究で知られる近畿大学の村瀬憲夫名誉教授と話す中、和歌浦の価値について「和歌か、景観か」と議論に。和歌とは異なる視点、政治や人々の生活から玉津島の歴史を読み解こうと考えた。

 著書では、古代から近世にかけて順にたどった。聖武天皇の行幸については、朝鮮半島との貿易の窓口だった和歌山への政治力を示すためだったとして、パフォーマンスの一つで山部赤人に和歌を詠ませ、その一環で当時の干潟一帯の呼称「弱浜」を「明光浦」に改めたとみる。江戸時代には、後桜町上皇がお忍びで参詣し、公家の冷泉家から和歌や絵が贈られるなど、京都との深いつながりがあったことを紹介している。

 A5判、184㌻。2160円。主要書店で販売。和泉書院(06・6771・1467)。

写真=30年の研究をまとめた藤本名誉教授

(ニュース和歌山/2019年7月20日更新)