創業35年、初めて訪れた人もどこか懐かしさを覚える洋菓子店サブール(本店=和歌山市卜半町)。今春オープンしたイオン和歌山店を加え、現在は和歌山市内に4店舗をかまえます。店内には色彩豊かなケーキや、直径12㌢と一際目を引く巨大シュークリーム「キャベツ」などがずらり。洋菓子部門では県内で唯一、厚生労働省の〝卓越した技能者の表彰〟を受けている駒井良章社長(65)に話を聞きました。(文中敬称略)
風味にこだわり
──店内は多彩なケーキや焼き菓子が並びます。
駒井 レシピは全て私の考案です。季節商品も多く、今では何種類あるのか分かりません(笑)。主力商品は創業した1979年当初から販売している「キャベツ」。パイ生地とシュー皮を組み合わせた大きなシュークリームで、お客さんを驚かせたいと考えました。同じく初期から出している「プリンセスプリン」もメロン半分をぜいたくに使ったもので、みなさんびっくりされますよ。
──こだわりは。
駒井 素材それぞれの風味を大事にすること。砂糖はもちろん使いますが、果物のフレッシュさを引き出すための最低限の量に抑えています。実は店名の「サブール」はフランス語で「風味」という意味なんです。このほか、例えば使用するリキュールはオリジナルブレンドのものなど調味料にも気を配っています。
──贈答用の焼き菓子類も豊富です。
駒井 ふるさと和歌山の良さを県外に持って行けるようにと、10年ほど前に立ち上げたのが「紀の郷」ブランドのお菓子です。生石高原の庭先卵を使ったマドレーヌ、紀州の白備長に見立てた「釜出しスティックパイ」など約10種類あります。
始まりは四畳半
──―創業のきっかけは。
駒井 実家は和歌浦せんべいなどを作っていました。野球のグローブの形をしたカステラなんかも売っていて、カステラのような膨らむお菓子に興味を持ったのがきっかけです。大阪などで約10年修行し、77年、せんべい店の一角に四畳半ほどを借りてケーキの販売を始めました。幅180㌢のショーケースが一つあるだけでしたが売上は順調で、2年後に洋菓子店として再出発しました。
──―開店以来35年、常連も多いのでは。
駒井 本店は大通りに面しておらず、前の道は人通りが多くはない。何かのついででなく、わざわざ来ていただく場所にありますから、非常にありがたい。以前は県立医科大学が近くにあり、お医者さんもよく買いに来てくれました。今は和歌山を離れ、他府県に移った先生が、わざわざ電話で予約して買いに来てくれることもあるんです。
──守っていることは。
駒井 創業当初から年中無休は続けています。1月1日生まれの方もいらっしゃいますからね。毎年元日にバースデーケーキを買いに来てくださるお客さんもいます。
──いつも開いているのはうれしいですね。
駒井 みなさん、心にふるさとを持っています。和歌山に生まれ育ち、菓子職人としてふるさとで生きられるのは幸せです。お客様にもふるさとを思い出してもらえる味を提供したいというのが私の思い。ですから何十年も通ってくださる方がいることがうれしいんです。
──最後に今後の夢は。
駒井 今販売している商品も全て自信を持っておすすめできるものばかりですが、さらにその上をいくものを、そう、店名の「サブール」を名前に付けたいと思うお菓子を作ることですね。
駒井良章…1949年、和歌山市生まれ。79年に洋菓子店サブール創業。2004年に厚生労働省の卓越技能者表彰受章。このほか、全国菓子大博覧会、西日本洋菓子コンテストなど受賞多数。県洋菓子協会会長も務める。
(ニュース和歌山2014年11月12日号掲載)