紀淡海峡の雄大な風景を一望しながら、四季折々の海の幸を味わえる宿、休暇村紀州加太(和歌山市深山)。10数人の料理人を引っぱる西田愼さん(51)は一料理人として腕をふるう一方で、「鯛の町加太」をPRする鯛バーガーや鯛ラーメンといった手軽なメニューを考案し、〝味力〟を発揮する。紅葉鯛の季節を前に活気あふれる厨房で話を聞いた。(文中敬称略)
脂がのり始める秋
──秋の鯛は「紅葉鯛」と言うそうですね。
西田 秋はこれから冬に向けて餌を食べて脂肪を蓄えていく季節で、脂がのり始めるところです。最近になって紅葉鯛と呼ぶようになりました。
──料理の道に進んだきっかけは。
西田 私は旧清水町出身です。両親が共働きだったため、自分のために卵焼きやチャーハンといった簡単なものを自炊しているうちに料理に目覚めました。最初はコックになろうと、高校を出て、辻調理師専門学校へ進みました。その時、洋食と違い、和食の方が出汁の取り方ひとつとっても奥深いように感じ、和食の道を選んだのです。
──―紀州加太では今年で20年目だそうですね。
西田 卒業後、京阪神の結婚式場やレストランでしばらく働いていましたが、和歌山で働きたいと思って戻ってきました。最初は板場で魚をさばく仕事からスタートしました。忙しかったです。
──―休暇村のメニューは地元和歌山のものにこだわりが強いですね。
西田 鯛やマグロ、熊野牛と和歌山の食材を前面に押し出したコース料理が主です。メーンの食材だけでなく、梅や山椒、新しょうがなど味付けに使うものも地元素材を使い、一ひねりしています。熊野牛の鉄板焼きには山椒塩、揚げ物には梅マヨネーズと味付けも和歌山風を心がけています。
加太をアピール
──「鯛の町加太」のアピールも熱心ですね。
西田 これまで鯛バーガーと鯛ラーメンを生み出してきました。鯛バーガーは、研修で南淡路の休暇村に行った際、ハモバーガーというのがあり、加太ならそのまま鯛でいけると思いました。新鮮な鯛をさっくりと揚げ、梅マヨネーズをからめ、大葉でアクセントをつけます。冷凍ではなく、いけすの鯛を使うぜい沢なバーガーです。夏休みは喫茶コーナーでなかなかの人気でしたよ。
──鯛ラーメンは。
西田 鯛の骨をオーブンで焼き、出汁をとってスープにします。もともと夕食の鍋料理で、これに似たスープを出しており、好評でした。これをラーメンに合う味にして、香ばしく焼いた鯛の切り身と、相性のいいゆず、白ネギを加え和風のラーメンに仕上げます。和歌山のラーメンは濃厚ですが、これはあっさりとした味で、みなさんスープを飲み干してくれます。和歌山市主催のイベント「食祭」のコンテストでグランプリをとり注目を浴び、本脇産のシラス丼とのセットは好評です。ただランチタイム1日20食限定です。
── 発想が豊かですね。
西田 B級グルメ風のものを考えるには遊び心が大切。ミンチの代わりに鯛の身を使った鯛コロッケもあるんですよ。余裕のある時は魚の形にし、お出ししています。
── 今後は。
西田 王道のメニューで和歌山の個性を引き出せるものを作っていきたい。今、「山椒カレー」のレシピを考えている最中です。旧清水町の出身なので山椒にこだわっています。和歌山の素材が生きるメニューを生み出していきたいです。
データ
休暇村紀州加太…和歌山市深山483、電話(073・459・0321)。営業時間は午前11時30分〜午後2時。1時30分ラストオーダー。
(ニュース和歌山2014年10月8日号掲載)