20140924miryokuokazaki

 新しい住宅が建ち並び、イオンモールへの買い物客も訪れ活気づくふじと台に6月オープンしたイタリアンレストラン「イル・リトロボ」。イタリア・ナポリの名店「スタリータ」の名匠のもとで腕を磨き、ニューヨークや東京、福岡で経験を積んだピッツァイオーロ(ピザ職人)、岡﨑祥幸さん(28)が開いた。独立を果たし、故郷で本場の味を広める思いを聞いた。(文中敬称略)

生地は女性のように

──扉を開けてすぐ正面、ピザをつくる作業台と色鮮やかな黄色の薪窯が出迎えます。

岡﨑 薪窯は2・5㌧あり、ナポリで造ってもらいました。作業台はバンコといいます。イタリアのピッツァイオーロたちは「生地は女性のように扱え」と言うんですよ。ここで生地を伸ばしてチーズやソースをトッピングし、薪窯で焼くまでを見てもらえます。具材をメーンに味わうアメリカンピザと違い、ナポリピザは生地そのものを楽しむのが特徴です。

──ピザだけで30種類、パスタ、揚げ物と豊富なメニューが並びますが、おすすめは。

岡﨑 ピザ生地の中にチーズや肉をつめて包み、高温で揚げるピッツァフリッタ(揚げピザ)ですね。さっくりした口当たりともっちりした食感で、焼いたピザと食べ比べて「本当に同じ生地を使っているの?」と驚かれます。実際に試してほしいですね。

──―こだわりは。

岡﨑 ピザに使う小麦粉やチーズ、トマトソースはすべてイタリアから取り寄せ、ソースはナポリで修業した店「スタリータ」と同じものです。野菜や魚は新鮮な和歌山産。色んな料理をたくさん食べてもらいたいと、例えば前菜の盛り合わせは単品メニューにない品で構成しています。食後のコーヒーは、イタリアの豆とこだわりのマシンを使っていれています。

──―オープンから3ヵ月たちました。

岡﨑 テラス席があり、隣にプールがある開放的なロケーションがよく、子どもからお年寄りまで、幅広い年齢の方が来てくださいます。先日、4歳くらいの子がお母さんに「おいしかったね、また来たい」と言っているのを聞いたときはやっぱりうれしかったですね。子どもの言葉にうそはないですから。

飛び込んだ修業生活

──ピザ職人の道を選んだきっかけは。

岡﨑 星林高校卒業後、神戸のホテルでフランス料理を担当していましたが、ピザやパスタが好きだったので、20歳のときに1カ月間、イタリアを回ったんです。初めての海外、そこで本場の味に「こんな食べ物あるのか」と衝撃を受けました。23歳でナポリに渡り、ピッツァ界の重鎮、アントニオ・スタリータの店に魅せられました。常に2時間待ちの人気店でしたが、1カ月間昼夜通い、「働かせてほしい」と訴え続けた。50軒回った中で一番ほれた店でした。

──修業生活はいかがでしたか。

岡﨑 あちらでは生地をのばす、トッピングする、焼く、カットする、と一つひとつの工程が分業です。料理に没頭し、「遊ぶために働く」というイタリア人気質も学びました。その後はニューヨーク、東京、福岡でイタリアンレストランの立ち上げに携わりました。

── 目指すところは。

岡﨑 ナポリ料理はいい意味で、ラーメンのように大衆的でわいわい楽しく食べるものです。「イタリアンに行くから」とかしこまらずに、気軽に集ってもらいたいとの思いで、イタリア語で「たまり場」を意味するリトロボと店名を名付けました。また、イタリアでは従業員が楽しそうにノリノリで働いています。味だけでなく、そんな楽しい雰囲気も届けていきたいですね。

データ
【イル・リトロボ】和歌山市中591の45。ランチは正午〜午後2時、ディナーは午後6時〜11時。テイクアウト可。月曜と第1日曜定休。電話(073・480・6350)。

(ニュース和歌山2014年9月24日号掲載)