子どもも大人も楽しめる場に
子どもたちの憩いの場として40年以上親しまれてきた「まゆーら文庫」。和歌山市冬野にある正教寺本堂脇の一室に設けられた児童文庫が、大人も楽しめる場として10月5日㊏にリニューアルオープンする。代表を務める同寺坊守(住職の妻)の藤浪和子さんは「かつて通っていた子が大人になり、子どもを連れて来てくれることも。こうして帰ってきてくれるという意味では、ふるさとのような場所だと思っています」と目を細める。
1976年に開設されたまゆーら文庫。蔵書数約500冊から始め、現在は2000冊ほどの絵本、児童書が約6畳の部屋に並ぶ。借りた数が100冊、200冊、1000冊に到達した子は表彰。1000冊を達成した子は9人いる。スタッフで元図書館司書の芝直子さんは「多いときは1日30人ほどの子どもたちでにぎわいました。紹介した本を『面白かった!』と言ってもらえたときが一番うれしいですね」とほほえむ。
児童文庫としてだけでなく、工作や料理教室、境内で流しそうめんを行うなど、体験の場としても愛されてきた。かつて3人の子どもと一緒に通った前田美吏さんは「芝さんが教えてくれた工作を夏休みの宿題にしたこともありました。近所に子どもと同い年ぐらいの子がいない中、ここに来ると友達が集まっていて、半日楽しめました」と懐かしむ。
少子化の影響で近年は利用者が減る中、今年3月に長年の活動が認められ、伊藤忠記念財団の子ども文庫功労賞を受賞。その賞金を活用し、文庫を新しくした。また、「サロン・ド・まゆーら」と題し、大人も本に親しめる場を提供することに。ファッション、旅行、グルメ、子育て、仕事など多ジャンルの200冊を準備し、飲み物を片手にのんびりとした時間を過ごしてもらう。
副住職の藤浪明覚さんは「心安らかに、少し生活が豊かになるお手伝いができないか。そんな思いで家族や友人と話しているうちに、大人向けブックカフェのイメージが固まりました」。さらに「人生の目的というと大げさですが、自分なりのテーマを持っていろいろなことを楽しむ、そんなことをさりげなく提案できるような本のセレクトを目指したい」と張り切っている。
利用は第1、3、5土曜の午後2時~4時半。児童文庫はそれ以外の日もスタッフがいれば可。11月2日㊏に子ども向けの「忍者のお話し会」、毎月第3土曜におとなの書道講座(500円)を開く。同寺(073・479・1871)。
写真=子どもを見守ってきた藤浪代表(左端)と芝さん(右端)
(ニュース和歌山/2019年9月28日更新)