第三楽章 変わる駅・育てるまち
2015年9月、地域主導で南海和歌山市駅前通りの一部を「緑と憩いの広場」にする社会実験「市駅 〝グリーングリーン〟 プロジェクト」が始まった。
目玉は道路に芝生を敷き詰めたピクニック広場である。ふたを開けると、レジャーシートを広げる家族連れ、孫と一緒にベンチでくつろぐお年寄りなど、多くの人々が思い思いの時間を過ごす光景が現れた。アンケート回答者の大半が広場化に賛同し、見学に訪れた市長からも建設的な言葉をいただいた。
初回の成功は地域にとって大きな励みになり、活動の継続につながった。安全に行えたことで警察も柔軟になり、翌年は近畿では前例のない昼夜間通行止めによる社会実験が実現する。
市堀川ではポポロハスマーケットや市内の関係者と連携して船を走らせ、2年目からは多くの店舗や企業・団体の協力により、各所で特別な体験ができる「まちぐるみミュージアム」も開始した。3年目はクラウドファンディングを試み、支援の輪が広がった。
人口減少時代のまちづくりは、施設整備だけでは立ち行かない。まちを市民のかけがえのない居場所として、市民の手で「いかに育てるか」が鍵を握る。
まもなく図書館を併設した新たな市駅ビルが完成し、市民会館もお城の前に生まれ変わるが、これからが正念場である。我々も駅前のビルオーナーT氏を理事長に、市駅地区のエリアマネジメントを推進する社団法人を設立、18年には市駅近くの紀の川を活用する社会実験を開始した。そして緑と憩いに満ちた市駅前通りを実現すべく、市と連携して再整備と活用方法の検討を進めている。
「まちづくり交響楽」は現在進行形の運動である。前向きな意見を「交わす」こと、考えや思いが「響く」こと、何より皆が活動を「楽しむ」こと。大切なのは、3つの動きが世代や立場を超えて広がり、持続することである。
第4楽章から先の「交響楽」をより豊かなものにするために、皆さんも観客ではなくプレーヤーになりませんか?
(ニュース和歌山/2020年1月25日更新)