各地の城で人気の「御城印」が4月1日、和歌山城でもお目見えした。和歌山県内では昨夏発行の新宮城跡に次ぐ公式の御城印、登城券売り場で販売する(1枚300円)。またオリジナルTシャツなどを手がける紀州戦国屋(九度山町)は戦国武将、藤堂高虎に関する御城印を独自に製作。和歌山の歴史発信に一役買っている(なお、和歌山城天守閣はコロナウイルス感染拡大のため閉鎖中の可能性があります)。

和歌山城、新宮城跡に登場〜藤堂高虎伝える連作も

 寺や神社で参拝者に向け押印される「御朱印」ブームを受け、ここ数年、各地で登城記念の「御城印」づくりが進んだ。多くは安価で、城の個性にそったデザインが受け、御城印を発行する城は200ヵ所とも言われる。

 和歌山城はこれまで公式の御城印はなく、再建60周年や令和元年の記念に無料配布したのみ。しかし、来城者からの要望が多く、和歌山市文化スポーツ振興財団が作成した。紀州徳川家伝来の金印による「南海之鎮」を背景に、「登城記念南海之鎮 和歌山城」との文字を印刷している。「実物の金印は、わかやま歴史館にあり、こちらにも興味を持ってもらいたい」と和歌山城天守閣学芸員の谷口弥生さん。

 コロナウイルスの感染拡大で、和歌山城天守閣は一時閉館となったが、4月中は期間限定で桜の柄をそえたため、発売2週間で200枚以上を売り上げる人気となった。

 これに先立ち、県内で初の御城印を出したのは新宮市観光協会、「新宮城跡」だ。昨夏、水野家が入り400年を記念し製作した。「国指定史跡 続日本百名城 新宮城跡」との書と築城にあたった浅野家、水野家の家紋を押す。同協会と阿須賀神社で1枚300円で取り扱いを始め、これまで1000枚近くを売り上げた。同協会は「続日本名城100選に選ばれ、昨年は来る人が増えました。コロナで観光客は減りましたが、お城好きの人同士のふれあいに役に立てば」と望む。

 一方、九度山町で紀州九度山真田砦を運営する紀州戦国屋は独自にデザインした御城印を打ち出す。昨秋に紀の川市粉河の猿岡山城の「猿岡城」はじめ、紀伊国だった三重県熊野市の「赤木城」、和歌山城も「虎伏城」で製作、各300円で販売を始めた。

 「すべて築城の名手、藤堂高虎が手がけた城です」と折原收(おさむ)代表。「高虎は晩年の徳川家康に最も信頼された優れた武将。魅力は簡単に語れない。数々の城普請を手がけた高虎がかかわった和歌山の城を知ってほしかった」と語る。

 猿岡山城は羽柴秀吉の紀州攻めの後、高虎が築いた城館で、和歌山城築城の拠点とした。また、赤木城は羽柴秀長が高虎に築城させた城で、折原代表は「有名な竹田城と同じような天空の城。石垣の美しい城跡です」。

 いずれも〝虎の城〟と記され、高虎のかぶとのシルエットと家紋を施した。ガイドブックでも紹介され、全国から反響がある。「猿岡城」を販売する観光特産センターこかわの尾﨑三津代さんは「発売当初、御城印ブームがあってか全国から買いに来てくれ、驚きました。皆さん城の跡を訪れ、粉河寺の大きさに驚いてくれます。うれしいですね」と話している。

写真上=紀州徳川家伝来の金印を背景にした、同下=高虎のかぶとをデザインに施す

(ニュース和歌山/2020年5月9日更新)