海辺のまち、和歌山市雑賀崎を舞台にした絵本『うみのハナ』を紀美野町のイラストレーター、スケノアズサさんが制作し、5月、多くの若手プロ作家を輩出している「ピンポイント絵本コンペ」で最優秀賞に輝いた。彼岸の中日に夕日を見る風習が題材で、「今もその伝承をつなげようと続けている人たちがいる。そのことを大切にしながら描きました」と語る。
スケノさんは5歳と3歳の娘を育てながら、田舎暮らしの経験を漫画にしたり、県発行の冊子でイラストを担当したりと活動。また、2年前から毎月、三重県で開かれる絵本塾に通ってきた。
東京のピンポイントギャラリーが20年前から主催する同コンペは、過去に17作品が出版に至っている。今年は192点の応募があった。
『うみのハナ』は一人の女の子が主人公。祖父母が営む理髪店に遊びに行ったとき、祖母から、ハナが降るように輝く夕日の話を聞き──。
制作にあたり、かつて雑賀崎で営業していた理髪店をはじめ、地元の人を取材した。「娯楽が少ない時代、ご近所で誘い合い夕日を見に行く風習が素敵。絵本を完成させたのは初めてで、その大変さが身にしみた一方、最後のページを仕上げる時は寂しさを感じるぐらい充実した時間でした」
作品は8月、東京で展示される。夢の出版へ大きな一歩を踏み出したスケノさんは「100年たっても色あせない絵本もある。私自身も将来、末永く読み継がれる作品を描きたい」と話している。
(ニュース和歌山/2020年6月13日更新)