紀伊半島の良質な温泉を巡るスタンプラリー「紀泉温泉修験道」が6月26日の露天風呂の日、5周年を迎えた。参加者は延べ3000人で、修験道にちなみ、88ヵ所を巡ると与えられる「先達」は20人が達成した。県外からの参加が多く、新型コロナウイルスで打撃を受けた温泉観光地のPRにと期待されている。実行委員長の西口正敏さんは「1日で2、3ヵ所を回れるルートづくりを心がけた。細々と続ける個性的な温泉の周知につなげたい」と熱を込める。
スタンプラリー参加3千人〜湯巡り 修行に見立て人気
古くは古事記や日本書紀の時代から和歌山は関西の湯どころとして知られ、天皇が薬湯につかりに行幸した記録も残る。温泉ブームが起きた昭和40~50年代は、多くの団体客が白浜や那智勝浦へ押し寄せた。日本温泉協会によると、近年は少人数の旅行が主流となり、ひなびた温泉や山奥の秘湯が脚光を浴びている。
こうした中、和歌山市の花山温泉に勤める西口さんが考案したのが「紀泉温泉修験道」だ。温泉観光管理診断士の資格を持ち、研究や実験を重ねて独自の温泉管理や安全対策を確立。休日は全国の施設へ赴き知識を伝えるほか、温泉好きが集う温泉観光実践士協会の養成講座開講に尽力する。
和歌山の温泉を盛り上げたいと考えていた西口さんは8年前、実践士協会の浦達雄会長から「人気の別府八湯温泉道の和歌山版をしては」とアドバイスを受けた。和歌山県内に広がる修験の道を重ね、和歌山をイメージできる紀泉温泉修験道を2015年に立ち上げた。「がむしゃらにスタンプを集めるのではなく、各地へ足を運び、温泉に入って心身を磨く。それが温泉道です」と説明する。
スタンプラリーは、49施設で販売している温泉先達帳(200円)を購入し、湯に入って印を集めるだけ。1冊で8ヵ所を巡ると「名人」、11冊目、通算88ヵ所で「先達」の称号が得られる。
最初は月に1人、名人が出る程度だったが、口コミで全国の温泉好きに広まり、5年間で名人は約570人、先達も20人誕生した。先達に3度なった大阪の山口桂司さんは「仕事で行き詰まったら、リストにある温泉でぼーっと過ごして頭をスッキリさせる。ガイドブックにない和歌山の魅力や名産を知人に伝えるのにもちょうどいい」と魅力を語る。
手弁当で割引なしにもかかわらず、温泉好きをとりこにする魅力は、実行委員が1湯ずつ巡り、泉質や温泉管理の面からじっくり選んで加盟を打診しているからだ。8施設からスタートし、今は49施設あり、将来は88施設を目指す。紀の川市にある神通温泉の庄司佳代さんは「5年でスタンプ帳は500冊以上出た。色々な温泉を巡った人に『どの湯が良かったですか』と話しかけるのが楽しい」と声を弾ませる。
感染症対策で営業を自粛していた県内の温泉施設の多くは、6月に再開した。当面は国内旅行客が観光の中心になる。日本温泉協会の関豊さんは「湯につかり身ぎれいにする日本人の習慣が感染被害が少ない理由とも考えられ、調査すべきとの声がある。泉質の種類が多い和歌山へ関心が集まれば」と期待している。
詳細は紀泉温泉修験道HP。
写真=「県の温泉観光に少しでも役立てば」と西口さん
(ニュース和歌山/2020年6月27日更新)