戦後、養子縁組でアメリカに渡った女性が日本に戻り、生みの親を訪ねる旅を、和歌山大学観光学部の木川剛志教授(43)がドキュメンタリー映像『戦後横須賀、母と子の物語』にまとめた。撮影のきっかけはその女性の日本名が同じ〝木川〟だった偶然。映像は25日㊏、初めて披露される。

 

和大観光学部 木川剛志教授 同姓が縁で調査協力

 「キガワノブコという女性を知っていますか?」──。一昨年の夏、木川教授のフェイスブックにメッセージが届いた。差出人はアメリカに住むバーバラ・マウントキャッスルさん(72)の娘。バーバラさんは戦後、神奈川県横須賀市で生まれた。母は日本人で、父はアメリカ人と思われる。5歳の時、養子縁組しアメリカへ。日本名は木川洋子で、母の名は信子。母を探すため、名字が「キガワ」の人を探し、手当たり次第に連絡していた。

 その一人が木川教授だった。木川信子さんに心当たりはなかったが、都市計画が専門で、空襲を受けた街の復興や戦争孤児の生活について研究していたことから、調査の協力を決めた。

 木川教授の丹念な調査で、信子さんの幼なじみや職場の同僚を探し当てた。残念ながら、信子さんは1987年に亡くなっていたが、墓の場所を突き止めた。バーバラさんは昨年秋に来日。墓前に花をたむけ、母を知る人たちから生前の母について話を聞いた。そして帰国直前、母が勤めていたパン店の関係者が1枚の写真を持って駆けつけた。その写真には和服を着た信子さんの姿が…。

 木川教授は「バーバラさんはアメリカで養父母から虐待を受けるなどかなり苦労されましたが、お母さんがどこかで生きていることが心のよりどころだったそう。『お母さんも同じ月を見ているだろう』と思いながら、夜空を眺めていたようです」。

 バーバラさんの映像が上演される「多分、今まで見たことのないような講談会」は7月25日午後1時半、和歌山市西高松の和歌山県立図書館2階で開かれる。映像は講談師、玉田玉秀斎さんの語りをまじえて披露。木川教授が監督を務めた映画『河西橋』上映、玉秀斎さんの講談、わかやま楽落会会員の落語も。無料。希望者は同会(nope930@gmail.com)。先着60人。

写真=バーバラさん(左)の母親探しに協力した木川教授

(ニュース和歌山/2020年7月18日更新)