相次ぐ自然災害で必要性が高まり、取り組みが進み始めた無電柱化。県内ではこれまで和歌山市の中心部で進められてきたが、今後の計画では、防災への配慮に加え、景観の向上を目指し和歌浦地区で進みそうだ。住民からは「より多くの人に来てもらえる地域づくりにつながる」と歓迎の声が上がる。

国が推進 和歌山県は5ヵ年計画〜景観向上に和歌浦整備

 高度成長期、一般家庭に家電が普及し、電柱は一気に広がった。一昨年の調査では国内で約3600万本に及んでいる。

 しかし、2011年の東日本大震災はじめ自然災害で倒壊が増え、必要性の議論は高まった。加えてロンドンやパリは無電柱化率100%、アジアでも香港、シンガポールが100%、台北96%、ソウル49%に対し、東京23区8%、大阪市6%と遅れも指摘されている。

 16年には無電柱化推進法が施行。災害防止▽安全・円滑な交通の確保▽良好な景観形成を目的に、国や自治体に施策策定、関係事業者にも電柱・電線の設置抑制や撤去、技術開発を求めている。

 これまで和歌山では主に国土交通省近畿地方整備局和歌山河川国道事務所管理の155㌔(日高川町以北)で、国道24号〜42号の汀丁、県庁前など和歌山市中心部10㌔で無電柱化。一方、県の管理道路でも、三年坂通り、県庁舎前、けやき大通りと市街地の県道中心に17㌔で進めた。

 高野町は世界遺産登録を受け、08年に国の景観行政団体に。主要な県道、町道の8割(5㌔)で整備を終え、完了を目指す。

 注目は今後だ。和歌山河川国道事務所は国道24号の和歌山市鳴神、鳴神〜栗栖の計2・8㌔、42号の同市高松〜和歌浦東間の計5・4㌔、有田市古江見0・9㌔の合計9・1㌔で計画。同事務所は「歩行者の多い市街地で整備を進めています」。

 県は今春、今後5年の計画を発表。県道や一部国道12地点計12・6㌔が対象で、同市手平〜小雑賀の1・5㌔、同市太田〜鳴神1・2㌔の幹線道路、同市西ノ庄〜加太の粉河加太線2・8㌔など防災上重要な地点で着手する。緊急輸送道路の無電柱化が課題で、県道路保全課は「災害で電柱が倒れ、道路が寸断されてはならず、防災は優先される」と話す。

 目立つのは和歌浦地区。国道42号は和歌浦東まで至り、和歌浦交差点付近は歩道と合わせ整備される。県道は新和歌浦〜和歌浦中の0・9㌔、和歌山市でも「歴史的風致維持向上計画」に沿い、市道和歌浦口雑賀崎線など御手洗池周辺で22年完成を目標に進める。和歌浦連合自治会長の大道眸(ひとみ)さんは「国道も和歌祭が巡るルートもすっきり見てもらえる。今はコロナで厳しいが、和歌山の顔の一つとして県内外から来てもらえる地域に発展すれば」と望む。

 無電柱化について和歌山河川国道事務所の小野武副所長は「防災面、交通面で住民にメリットが大きく、喜ばれる」としつつ、「地下にある障害物を正確に把握する手間や時間がかかり、支障のないように慎重に工事を進めねばならない」と難しさを語る。

 和歌山大学観光学部の永瀬節治准教授は「独自に進めてきた地方自治体はあるが、04年の景観法施行、観光立国政策、毎年の激甚災害を受け、国として進める流れにある」と解説。「要はコスト面と行政のやる気次第ですが、日常的に道路を使う住民のコンセンサスができ、地域から声があがれば行政も進めやすい。住民が平時の、地域の道のあり方を考えるのが第一歩」とみている。

写真上=無電柱化が今後進む和歌浦。和歌祭のルートも対象だ、同下=三年坂通り

(ニュース和歌山/2020年8月22日更新)