和歌山市 80代女性 新型コロナ元感染者に聞く

 県内の新型コロナウイルス感染者合計数は15日時点で236人。7月中旬にPCR検査で陽性となり、12日間の入院生活を送った和歌山市の80代女性に話を聞いた。

 感染ルートは女性宅へ通うホームヘルパーだった。その濃厚接触者として、保健所の要請でPCR検査を受け、陽性が判明。そのまま入院した。自身の濃厚接触者は3人で、全員が陰性だったが、「何も知らずに出歩いた日があったため、迷惑をかけてしまった。もっと早く分かっていれば…と初動対応に複雑な思いでいます」。

 隔離された病室のベッドに横たわった時、「高齢だし、子どもと顔を合わさずに終わるかもしれない」と不安がよぎった。家族は医師に「入院から5日間が勝負」と伝えられていた。

 院内での食事はすべてプラスチックの弁当箱に入れられ、食べ終わると病室内のゴミ箱に廃棄した。2日目から味覚障害に苦しめられ、食べ物がのどを通らなくなった。友人に頼んで届けてもらったまんじゅうがとても苦く感じられ、思わず吐き出した。その後、発熱も始まり、呼吸が苦しくなる。けん怠感が全身を襲い、一つひとつの動作に時間がかかるように。「とにかく、今を耐えようと自分に言い聞かせていました」

 アビガンなどの投薬はなく、医師からは軽症だと言われた。日に日にやせていくのが分かる中、心の支えは友人たちとの電話。外とつながる唯一の手段で、〝命の電話〟だった。

 発熱は7日間続いたものの、症状は徐々に回復し、再検査を受け、医者から感染力はもうないと言われ、退院が決まった。12日間の入院で体重は5㌔減。病室に持ち込んだ荷物は全て廃棄した。

 退院後は2週間の自宅待機。1週間ほどで味覚が戻り、安心した矢先、近所に「コロナで入院したらしいから、あそこの家に行ったらあかん。感染する」と言い回っている人がいると知った。心ない言葉に傷つき、他人の目がどれだけ恐ろしいか身を持って感じた。

 これからは徐々に行動範囲を広げ、日常生活を取り戻すつもりだ。「息子家族や友人が懸命に生活を支えてくれ、感謝してもしきれない。世話になった人に恩返しする人生が始まりました」

(ニュース和歌山/2020年9月19日更新)