下津の魅力触れられる場に
明治20年(1887年)創業の料理旅館、一木(海南市下津町上)が約5年間の休業期間を経て再開した。3代目のおいで、学習塾を経営する一木謙吾さんが継いだ。10月30日にランチ営業から再出発しており、「料亭も旅館もできるだけ早く復活させ、曾祖父、祖父、叔父と受け継がれてきた歴史、そしてプライバシーを大切にする部分を守っていきます」と意気込む。
一木が建つのは、紀州徳川家の菩提寺、長保寺へ続く参道沿い。首相経験者や著名な文化人に愛されたほか、地元住民たちの結婚式や同窓会、石油関連企業の商談、接待などに使われてきた。
5年ほど前、3代目の龍二さんが体調を崩して休業。店が気になっていた謙吾さんが昨年、再開に向けて動き出した。「塾の生徒たちが希望する大学へ進むためのお手伝いを長年してきましたが、ほとんどは和歌山を離れ、そのまま帰ってこない。それが心のどこかに引っかかっていました」。そして「48歳の今、新たなことに挑戦できるラストチャンス。和歌山のために何か貢献したい」と二足のわらじを決意した。
まずはランチ営業からスタート。洋食店を営んでいた父、謙三さんが腕を振るう。メニューには和歌山特産のハモやシラスを使った丼も。謙吾さんは「建物は文化庁の登録有形文化財に申請しました。近くには国宝の長保寺や善福院もある。味覚だけでなく、そういった歴史を含めた下津の魅力を、関西圏を中心とした皆さんに知ってもらえる場にしたい」と張り切っている。
午前11時半~午後2時。㊌㊍定休。一木(073・492・0988)。インスタグラム「一木 下津」。
写真=「伊藤博文書」とある書も残る老舗料理旅館
(ニュース和歌山/2020年11月21日更新)