社会を支える思いやり

 日本の人口は年々減少し、働く人の数も減ってきた中で、増えてきたのが外国人労働者です。2018年には和歌山県で2395人の外国人が働いています。

 これに伴い、学校にも外国籍の子どもたちが増えてきました。日本人であっても、両親の仕事のため外国暮らしが長く、日本語を話すことができず、言語指導が必要な子どももいます。授業で使う言葉や展示、配布物を「やさしい日本語」に変換することは学校生活への早期対応、就学の定着、進学の促進を助ける一つになるのです。

 しかし、社会の大きな流れとして、外国人へ情報提供のために進められているのは多言語化です。最近はAI翻訳ツールが発達し、スマホに無料アプリがあるほど、だれでも使えるようになりました。

 実はこの翻訳アプリを使用する時にも、「やさしい日本語」は活躍します。言いたいことを直接翻訳するのではなく、簡単な単語に言い換えてから外国語に直すと、正確に訳される場合が多いのです。例えば「土足厳禁」はそのままだと訳し方が難しく感じますが、「靴はダメです」とすれば、英語や他の外国語に変換しやすくなります。

 この他にも、医療現場や役所、観光業など多くの場面で利用されています。また言葉に不自由を感じる日本人の子ども、障害を持つ方、高齢者たちとの会話を円滑にする可能性を持っています。今まで理解しにくかったり、伝えにくかったことが「やさしい日本語」を使うことで、伝わりやすくなります。使える人が増えると、もっと安心して生活できる社会になっていくと確信しています。

 「やさしい日本語」の「やさしい」は「易しい、優しい」、そして「寛容さ」の意味を含んでいます。優しい気持ちで易しい言葉を使って、寛容な態度で思いやりを持って話を聞くことは、外国語を勉強することほど難しくありません。

 このコラムで興味を持ってくれた方はその一歩を踏み出してほしいと思います。一緒に「やさしい日本語」を和歌山で広めていきましょう。

(ニュース和歌山/2021年1月23日更新)