今回は、シーズンを迎えている桜に関する質問を和歌山市の上田公一さん(72)から頂きました。「和歌山県の桜の開花宣言は、紀三井寺にある気象庁標本木で判断しています。これはいつから、なぜ紀三井寺となったのか? なぜ和歌山城公園にならなかったのか?」です。

 今年は3月18日とかなり早い開花宣言となりました。確かに和歌山城はじめ桜の名所が多い中、なぜ紀三井寺なのでしょう。和歌山地方気象台気象情報官の荒木則孝さんに聞きました。

写真=開花宣言翌日の3月19日に撮影

 


 

空襲を免れたから

 「なぜ桜の標本木は紀三井寺なのですか?」とのご質問。和歌山地方気象台気象情報官の荒木則孝さんに聞きました。

 戦前戦中も和歌山では桜の観測を行っており、紀三井寺、和歌山城、和歌山市男野芝丁の気象台近辺の桜を対象にしていました。しかし、1945年7月9日の和歌山大空襲で市街地の桜は焼けてしまいました。「紀三井寺の桜は焼けず、無事だったため継続したようです」と荒木さん。

 本堂向かって左にあるソメイヨシノで、53年、統一の指針を定め、全国で生物季節観測がスタートした後も標本木として春を告げる大役を担っています。花が5輪開くと、開花を宣言します。

 今年は18日と観測史上2番目に早い開花となりました。2010年から20年まで11年連続で、近畿で最も早く開花を記録していましたが、今年は16日に京都で開花し、先を越された形です。

 生物季節観測は桜のほか、紫陽花、すすき、紅葉、銀杏も対象です。荒木さんは「桜の次に注目度が高いのは紅葉ですが、その差は比べものになりません。桜はやはり日本人にとって特別のもののようですね」と話しています。

(ニュース和歌山/2021年3月27日更新)