いちご、おもちゃ、たま、うめ星と多彩なユニーク車両が人気を集めてきた和歌山電鐵貴志川線。新車両「たま電車ミュージアム号」の年内運行を目標に、改装費の一部をCF(クラウドファンディング)で募っている。苦しい経営状況の中、乗客増を目指して2年前から進める〝キシカイセイプロジェクト〟の一環。小嶋光信社長は「動きやカラクリなど三次元、四次元のサプライズがある車両。アッと驚く世界初の電車です」と張り切っている。
たま電車ミュージアム号 年内運行目指しCF実施中
年間5億円の赤字を出していた貴志川線の経営を、和歌山電鐵が引き継いだのは15年前の2006年4月。貴志駅の人気者たま駅長やオリジナリティあふれる車両が注目を集め、05年度に192万人だった利用客は10年後の15年度、232万人にまで増えた。
当初の10年間は行政からの運行補助金があったが、16年以降は設備更新に特化したものになった。16年は黒字を達成したものの、その後は通勤・通学客が減少傾向に。17年、18年は台風被害からの復旧工事費もかかり、18年以降は赤字が続く。
ここに昨年からの新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。観光客の利用が見込めず、電車に乗って会場まで来てもらっていたタケノコ掘りやじゃがいも掘りなどの人気イベントも自粛せざるを得なくなった。
制約がある中でも、地域住民らでつくり、和歌山電鐵と共に様々な催しを企画してきた「貴志川線の未来を〝つくる〟会」は、コロナを吹き飛ばそうとの願いを込め、200個以上の風ぐるまを手作りし貴志駅を飾ったり、『鬼滅の刃』人気で注目を浴びた甘露寺前駅にのぼりを立てたりと活動を継続。木村幹生代表は「年配者が車を手放した後の足を確保する意味でも電車をなくしてはダメ。この1年もみんなで知恵を出し合ってきました」と話す。
苦しい状況を受け、和歌山電鐵はキシカイセイプロジェクトと題し、利用者増に向けた取り組みを19年から進める。クイズラリーやスタンプラリー、三社参り御朱印帖進呈など、これまで10の企画を実施した。昨年11月~今年3月には県、和歌山市、紀の川市の支援を受け、大人と子どものペアで1日乗り放題300円切符を発売。約8000枚を売り上げた。
プロジェクトの目玉となるのが、新型車両「たま電車ミュージアム号」だ。07年から人気を集めてきたおもちゃ電車を改装し、1両目は初代のたま駅長、2両目は現在活躍中のニタマ駅長をテーマにした博物館のような電車とする計画。トリックアートも取り入れる。
費用に5000万円ほどかかる見込みで、クラウドファンディングではこのうち1500万円を募る。「猫の日」の2月22日にスタートし、4月6日時点で593人から528万円が集まった。和歌山電鐵広報担当の山木慶子さんは「今年12月の運行開始が目標です。コロナが落ち着いたら、白浜のパンダ、楓浜(ふうひん)と合わせ、全国から和歌山へ来ていただけるツールとなるような新型車両を造りたい。そのためにぜひ皆様のご支援を」と呼びかける。
クラウドファンディングは5月21日㊎まで。詳細は和歌山電鐵HP、または「たま電車ミュージアム号運行プロジェクト」。
写真上=クラウドファンディングスタートのスイッチを押すニタマ駅長(和歌山電鐵提供)
同下=新車両の完成予想図
(ニュース和歌山/2021年4月10日更新)