先日、手話の講座に参加した。紙を両手で受け取る動きで「卒業」、2本の指をはしに見立てて「食べる」、人差し指を二の腕にあてて「注射」など、ジェスチャーに由来するものがあると知り、が然、興味がわいた▼手話は世界共通ではなく、国や地域によって違う。日本で「女性」は小指を出すが、アメリカではイヤリングを付けるように耳たぶを指で挟んで表現する。文化や習慣の中で共通認識があるからこそ、言葉は通じる▼小学校の先生が、算数の時間に「おつりはいくら?」と出題したところ、「おつりって何?」と質問された話をSNSで見た。最近の買い物は電子マネーのピッで終わり、現金のやりとりがないため、おつりの概念がないのだ▼これまで生活の中で確かにあった共通認識が、急速な社会変化で通じなくなっている。電子マネー化で現金を使う機会が減ると、親指と人差し指で輪をつくって、「お金」を表す手話は、なくなってしまうのか、それとも手話の中にだけ留まるのか…。 (得津)
(ニュース和歌山/2021年4月17日更新)