島精機社員が社内ベンチャー
リサイクル紙で環境に優しい糸をと、和歌山市の横編み機メーカー、島精機製作所の岩崎伸哉さん(写真左)と有北知史さんが開発を進めている。この糸で試作したくつ下を購入できるクラウドファンディングを実施中で、岩崎さんは「麻のようなシャリシャリした感触が気持ち良く、汗をかいたりムレたりするこれからの季節にぴったり。環境保全、機能性と一石二鳥の素材です」と目を輝かせる。
昨春、新型コロナウイルス禍で、古紙の輸入規制を強める動きが海外で広まっていると知った岩崎さん。国内で行き場のなくなる大量の古紙の活用を考えた。5月、社内ベンチャープロジェクトに、古紙で糸を作るアイデアを提案し、リサイクル紙糸とこれを使った製品の試作を始めた。
紙糸は、ロール紙にした古紙を数㍉幅に切り、こよりのようにねじり合わせて作る。古紙100%だとカットの段階で切れてしまうため、パルプを加えて繊維を増やし、強度を持たせた。
一度は完成したが、編む段階で再び難問が。毛や綿のような伸縮性がなく、機械を使うと切れてしまう。そこで、でんぷん由来のポリ乳酸糸をより合わせ、ろうでコーティングし表面を滑らかにしながら編むことで解決した。有北さんは「当社で何十年も編み機を使ってきたプロからアイデアを受け、細かく機械を調整してもらえたおかげ。機械で服を編める古紙製の糸は日本初です」と胸を張る。
試作したくつ下を試してもらいたいと、5月10日㊊までクラウドファンディングを実施。支援とともに、糸メーカーやデザイナーから期待の声が集まる。岩崎さんは「近年、環境保護を目的に新品の服を買わない運動が海外で広まっている。環境に優しい素材は、アパレルメーカーの売りになり、当社の既存事業との相乗効果もある。将来は古紙100%のような持続可能な素材を開発したい」と意気込む。
詳細は「リサイクル紙糸プロジェクト」。
(ニュース和歌山/2021年5月8日更新)