生かされている喜びを胸に、その時、感じたままを即興で作品に仕上げる、海南市下津町のライブペインター、田村まさみさん(49)。6月、これまでの作品を集めた展示会を和歌山市で開きます。制作活動を始めたのは2008年。その2年前に受けた心臓の手術がきっかけでした。

 

制作中は〝無〟

──ライブペイントとはどのようなものですか?

 「私の場合、お客さんの前で20分程度、音楽をかけながら、1枚の作品を仕上げます。筆やはけを使っていた時期もありますが、最近はアクリル絵の具を手に直接つけて描きます。関西一円のイベント会場に出向いて披露しています」

──どこかメルヘンチックで、独特な世界観の作品ですね。

 「こんな作品にしようと思いながら描いている訳ではありません。お客さんや会場の雰囲気、曲のイメージ、〝みんな元気で、幸せになってほしい〟との私の思い…。それらを作品に込めることだけを考えています。その時、その瞬間、感じたままを全身全霊で絵にしており、制作中、頭の中は〝無〟。完成した絵を見て、私自身が驚くこともありますね」

心臓病乗り越え

──絵は幼いころから?

 「粘土細工や木材にペイントはよくしていましたが、絵はあまり…。ただ、子どもの時から色が好きで、色鉛筆の箱を開けたり、折り紙を見たりしているだけで、飛び込んでくる色が楽しかった。色からもらうエネルギーがいやしでした」

「奇跡のほしからの贈り物」

 

──ライブペイントを始めたきっかけは。

 「生まれつき心臓が悪く、9歳の時、心房中隔欠損症と分かりました。疲れやすく、激しい運動ができませんでした。35歳の時、日本で新たな手術方法が認められ、受けました。『生かされた命を活かしたい』、そんな思いが芽生えました」

──その後は。

 「退院の日、当時、大リーガーだった井口資仁(ただひと)選手が入院していた子どもたちの慰問に来られました。会場に現れた瞬間、子どもたちがキラキラし始めたんです。喜びのエネルギーでしょう。私に何ができるのか分からないけれど、人を勇気づけることをしたいと思いました。しばらくして、出席した結婚式の余興で、初めてライブペイントをしました。『世界に一つだけの花』に合わせ5分ほどで仕上げると、新郎が号泣したんです。その時、『これだ』と直感しました」

──以来、感動を届けて13年ですね。

 「自然と涙があふれてくるお客さんは多く、『前に進める』『勇気をもらった』との感想もよく聞かれます。作品ができた後、その場を動こうとしない子どもさんも。6月の展示会でも、見た人それぞれ何かを感じ取り、その空間を楽しんでもらえればうれしいですね」

 

ライブペインターまさみ∞作品展「IT’s A WONDERFUL WORLD」

 6月1日㊋〜30日㊌、和歌山市松江中の九鬼ビル2階、アトリエピット。これまでのライブアートで描いた約30点。対面アートも(有料)。午後1時〜6時。㊍休み。田村さん(wonderfulworld.masa.0602@ezweb.ne.jp)。

(ニュース和歌山/2021年5月29日更新)