繁殖力強い特定外来生物
和歌山城天守閣へと続く表坂。石垣のすき間に多くの黄色い花が咲いている。特定外来生物に指定されているナルトサワギクで、以前からあったと見られるが、最近になり、急速に増えている。
「昨年はあまり気になりませんでしたが、今年3月ぐらいから、石垣や地面のあちこちで目に付くようになりました」。そう話すのは、和歌山城郭調査研究会会員の楠見修三さん。城内では二ノ丸広場の一角や追廻門周辺、護国神社の南側でも多く見られる。天守閣東側にも目立つ場所がある一方、西側は今のところ見当たらないが、「ここも時間の問題でしょう」と楠見さんは心配する。
マダガスカル原産のナルトサワギクは1年中、花を咲かせ、タンポポのように綿毛が付いた種を飛ばすため、繁殖力が非常に強い。草食動物に有毒な物質を含んでおり、家畜が食べると中毒症状を起こす可能性がある。国内では1976年に徳島県鳴門市で初めて確認され、その後、和歌山県内でも増加。2006年には栽培や野外に放つことが禁止される「特定外来生物」に指定された。
和歌山市役所和歌山城整備企画課は、3月に自然観察会を開いた際、講師を務めた根来山げんきの森倶楽部事務局長の岡田和久さんから指摘を受けて把握。「以後、目に付くところは抜き、日ごろの草刈りでも処理はしている」ものの、追いついていない。
岡田さんは「明るい場所が好きな植物で、和歌山城で数年前から取り組んでいる伐採により増えているのかもしれません」と推測。同倶楽部が管理する岩出市のげんきの森では、整備を始めた1999年、山を崩して造った道路ののり面に大繁殖していたが、10年ほど経過し、本来の自然が戻ってくると、ナルトサワギクは減ったそう。「和歌山城でも樹木が茂る森の中にはほとんど入っていけていない。日本本来の自然植生を壊してまで繁茂する植物ではないように思います」と話す。
なお、県はナルトサワギクを広めないため、根ごと抜いて袋に詰め、その場で枯死させ、燃えるゴミとして処分するよう呼びかけている。
(ニュース和歌山/2021年5月29日更新)