6月、梅雨の季節です。今回の妖怪大図鑑は特別編。雨にまつわる和歌山県内の妖怪2つを、漫画家マエオカテツヤさんが紹介します。

 

其の弐百四拾五 雨降り小僧


怖さ:3
町の妖怪
出没地域:海南市

 中国では雨の神を「雨師(うし)」と呼び、それに仕える子供が「雨降り小僧」だという。自然に深くかかわる雨を調節するのが雨降り小僧の役目とされるが、時に通り雨を降らせ、 人が困る様子を見て喜ぶいたずら好きでもあるらしい。昭和30年代、アスファルト舗装されていない土道が町のあちこちにあり、雨の後は水溜まりがよくできた。海南市に住むAさんが下校中、一つの水溜まりに目をやると、自分の姿が映っていた。水面にゆがむ自分を楽しんでいたら、突然、もう一人の自分が水溜まりから、 ぬっと出てきた。Aさんは飛んで逃げた。これも雨降り小僧の仕業だろうか?

 

其の弐百四拾六 蛇身の女


怖さ:0
里の妖怪
出没地域:日高郡

 昔々の話。日高郡のある村では、蛇の子孫とされる蛇身の女が必ず村に一人いて、その者が亡くなると、また次の蛇身の女が生まれた。この女は容貌に優れ、髪の毛は身の丈以上に伸びる。そして梅雨の時期になると、髪の毛がぬめぬめと粘り、もつれ合ってなかなか櫛を通さなかった。ただ、梅雨が明け、川で洗うと粘りが見事にとれて、さらさらになったという。なんとも奇妙な話であるが、村を守るために蛇身の女は存在していたと考えられる。蛇は神、または神の使いとして、古くから日本では信仰の対象となっているので、蛇の姿を借りた蛇身の女は村の守り神であったに違いない。

(ニュース和歌山/2021年6月5日更新)