海洋汚染を防ぐ脱プラスチックを目指し、岩出市で有機農園「ファームゆうき」を営む片岡かおりさん(42)は、自ら育てた麦をストローに加工しています。福祉作業所とタッグを組んで農福連携のモデルを作る試みが進行中です。

 

エコだけじゃない

──麦ストローとは?

 「麦の茎である麦わらを乾燥させた天然のストローです。節を避けてカットし、皮をはいで煮沸消毒するだけなので簡単に作れます。私が使っているのはヘイオーツという野生種のエン麦です。大麦や小麦も育てて試したのですが、丈夫で太く、節の間が長いヘイオーツが一番適していました」

──きっかけは?

 「4年前、緑肥用に栽培していたところ、友人が『これってストローになるよ』と教えてくれました。当時は今ほど脱プラスチックの動きが盛んではなく、驚いて調べると、長野の福祉作業所が加工した麦ストローを、東京のカフェが利用していたんです。環境だけでなく福祉にも役立つならと試作を始めました」

──それで福祉作業所と連携を?

 「折れや割れがあると商品にならないので、機械より手作業での加工が適しています。収穫して乾燥させておけば年中作れますので、慌てず働け、工賃アップにつなげられます。私の双子の弟が重度の障害を持ち、福祉作業所でお世話になっているので、お返しになればとの思いも大きかったです。とはいえ2年目は連携が進まず、3年目は長雨で麦がダメに。4年目の今年、由良町の作業所が引き受けてくれ、ようやく軌道に乗りました」

 

天然素材の香り

──ストローの特徴は?

 「麦の風合いがわずかに香り、懐かしさを感じます。加熱殺菌すれば繰り返し使えますし、使い終わったものをコースターに再利用することで、自然の材質を最後まで楽しめます。最初に試作したものを和歌山市の小売店や飲食店で使ってもらったところ、『環境への関心が高いお客さんと話が盛り上がった』と喜ばれました」

有機栽培の麦を加工

 

──広まりそうですね。

 「そもそもは農福の事業モデル作りを目指して始めました。挑戦したい農家や作業所があれば、知識や手法を全て伝えるのが目的です。農の形はできたので、次は福祉との連携が大切です。今秋は、種まきの段階から作業所とできるよう検討しています。利用者が農作業に携わることで、責任感や『やりたい』とポジティブな感情が生まれ、職員や地域の人たちとの信頼が深まります」

──今後の目標は?

 「前職は乗馬クラブに勤めていました。ものを食べられなくなったのがきっかけで食べ物について考えるようになり、農家へ転職しました。農業は生産だけにとどまらず、福祉、環境、教育、芸術などに貢献できます。地域の店が扱うことで、労働力不足にあえぐ高齢農家の耕作放棄地対策につなげ、エコや福祉に対する意識が高まればうれしいです」

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 詳細はフェイスブック「ファームゆうき」。和歌山市出口甲賀丁のくくたちで販売。

(ニュース和歌山/2021年7月31日更新)