終戦直後の1945年10月、和歌山市雑賀屋町東ノ丁に開店したまつや食堂はうどん店から出発し、今年で76年。洋食や丼物といったメニューは、今も多くの常連客を魅了しています。新型コロナウイルスの感染が拡大する今、30年ほど前から人気のカツサンドを、〝コロナにカツ〟との思いを込めてPR。代表の花岡豊さん(80)は「自分たちができることから始めたい」と意気込みます。
必要とされる店
──ハンバーグ、スパゲッティにカツ丼…。昭和の雰囲気が残ります。
「創業当初はうどんのみでした。ただ、昼と夜両方食べに来てくれるお客さんが多く、うどんばかりだと飽きてしまう。そこで寿司や洋食、中華など、徐々に幅を広げていきました」
──花岡さんは何代目ですか?
「妻の父が初代で、私が1964年に2代目として店を継ぎました。当時は周辺に官公庁の建物が今より多く、昼休憩や残業終わりによく来てくれていました。70人の従業員でも手が回らないくらいたくさんのお客さんが来られましたよ」
──繁盛店ですね。
「2階に100人以上入れる宴会場があり、お祝いの席や接待でよく利用していただきました。出前の注文、結婚披露宴のケータリングも多かったですね。昔からお客さんの要望にこたえるのを第一に考え、閉店時間を延ばしたり、リクエストに応じて料理を作ったり、必要としてもらえる店になるよう心掛けてきました」
自慢のデミ
──メニューにある〝わかカツ〟って新メニューですか?
「カツサンドなんですが、30年ほど前、結婚式用にケータリングの依頼があり、大勢で食べられるものを考えていた時、自慢のビーフカツとデミグラスソースで作りました。すると大好評。店のメニューに加えたところ人気になりました。世の中が新型コロナウイルスの影響で沈んでいる今、〝コロナに勝つ! 困難に勝つ!〟との気持ちを込め、『和歌山カツサンド』、略して『わかカツ』として、6月に商品名と持ち帰り用のパッケージデザインを一新しました。しんどいのはウチも同じですが、私たち発信でみんなを元気づけられることをと考えました」
──その〝わかカツ〟にはどんなこだわりが?
「トマトペーストをベースにお酢や砂糖などで作った、30年前から変わらないオリジナルデミグラスソースです。肉厚で食べごたえのあるビーフカツ、アクセントは辛子マヨネーズです。見た目は分厚いですけれど、とてもやわらかく、かむと肉汁とともにソースの甘みと酸味が感じられます。リピーターが多く、年配のお客さんもよく買って行かれます。ビールにも合いますよ」
──今後は?
「先行きが不透明な状況ですが、コロナ禍が明けたら、また宴会で利用してもらい、花見の時期にはわかカツを買って、お城で桜を楽しんでもらう…。そんな楽しい未来を考えつつ、お客さんへのサービス精神と、先代から続く味を守り続けるのが、私の使命だと思っています」
【まつや食堂】
和歌山市雑賀屋町東ノ丁64
10:30〜21:00
無休 ※1月1〜3日のみ休み
☎073・431・3371
(ニュース和歌山/2021年9月4日更新)