地元の写真家 松原時夫さん 作品集 相次いで2冊
和歌浦を撮り続ける写真家、松原時夫さんの作品集『砂のキャンバス』が9月に、続いて『沖ノ島』が10月中に道音舎から相次いで発行される。2月の『水辺の人』に続く連作で、「今回は少しマニアックな写真ですが、地元で見つけた美に触れてもらえたら」と話している。
「生まれた町で何を撮れるか、和歌浦から何が見えるか」をテーマに70年間、主にモノクロで撮影している松原さん。2月には和歌浦で暮らす人を撮影した初の作品集を発表し、300部が完売した。
『砂のキャンバス』は、昨年まで5年かけて片男波の砂浜を撮影した57枚を収録。風景ではなく、波や風が砂上に描き上げた形や濃淡に向けシャッターを切った写真で、人物のラフデッサンを思わせる作品が多い。砂浜に足跡がなく、潮のいい時間を選ぶ必要があり、今も毎日通って撮る。
一方、10月中に発行される『沖ノ島』は片男波や奠供山から有田市の沖ノ島を撮影したカラーの作品集。同じ場所から撮り続け、空気、水、光の色の組み合わせで、その時にしか姿を見せない沖ノ島をとらえた。「一度だけ夕方に金色に輝く光景を眼にしました。同じ風景を延々と撮り続けたからこそ見えるものがある」。22枚に及ぶ作品を収めた。
松原さんは「この光景を写真にしたらどうなるかという素朴な思いで作品を撮ってきた。死ぬまで撮影し、和歌浦でいつか一冊にまとめたいですね」と望んでいる。
ともにA4変形判で『砂のキャンバス』は67㌻、1万1千円。松木書店などで販売。300部限定。『沖ノ島』は48㌻、1万6千5百円。道音舎のインターネット販売で50部限定。
なお2冊の写真集の発売を記念する「松原時夫写真展」が20日㊌〜31日㊐、和歌山市十一番丁のギャラリーTENで開かれる。写真集の中から十数点を展示する。午前11時〜午後5時(最終日3時)。火曜休廊。同ギャラリー(073・432・5600)。
(ニュース和歌山/2021年10月9日更新)