昭和初期からの味を守る和歌山市中之島の洋食店、フジヤ食堂。1980年代に一度閉店するも、「多くの人々に愛された洋食を再び」と創業者の孫、中西資子さん(57)が3年前に復活させ、古くからの常連を喜ばせています。名物のフジヤライスはじめ、じっくり煮込んだドビソースのミンチボールやハヤシライス、さらにオムライス、プリンと〝昭和の定番〟をあらゆる世代に届けます。
祖父に恥じぬ味
──創業は?
「関西のホテルや料亭で修業を積んだ祖父、木村智吉が1932年にアロチで開きました。当時、洋食は珍しく、会社員や家族連れなどでにぎわったそうです。私も幼いころから祖父に料理を教わって育ちました。祖父が亡くなり、86年に店が閉まった時の喪失感は大きく、『いつか復活させるんだ』と誓いました」
──復活のきっかけは?
「跡を継ぐなんて簡単には言えませんでしたが、あの味を忘れられず、独自に再現を試みていました。25年前、和歌山市内に創作料理店を構えたのを機に、フジヤ食堂の看板メニュー、フジヤライスを提供。すると、当時を知るお客さんから『復活してほしい』との声が上がったんです」
──フジヤライスとは?
「7種類の具材で作る和風焼き飯で、1日200〜300食出ていたものです。ほかにも忠実に再現できる品が増え、『恥じない味を食べてもらえる』と思えた3年前、フジヤ食堂を再開しました。当時の味、盛り付けにこだわっています」
決め手はドビ
──味の特徴は?
「一番はドビソースです。元になるブラウンソースはバターと小麦粉に火を通し茶色く焦がすのですが、舌に残るおいしい苦味を再現するのに苦労しました。これに3種のスープなどを加え6時間煮込んだ後、1日寝かせて完成。これがフジヤの味の決め手です」
──どんな料理に?
「ミンチボールやビーフシチュー、ハヤシライスなどに使います。当時を知るお客さんはもちろん、知らない人には新しく感じるようです」
──ほかに人気は?
「国産和牛を薄切りし、山椒の効いた和風ソースで食べる『うすやき』は評判です。さらっとした秘伝のトマトソースを使うオムライスは、年齢問わず注文いただきますし、ハヤシソースをかけたビフオムライスは新しい定番です。卵と牛乳だけで作るプリンは、質感のある舌触りが良いとリピーターが多いです」
──今後の目標は?
「誕生日や結婚記念日、おいしいものを食べたい日など、家族の食事にフジヤの味を選んでもらえることが幸せです。『フジヤの…』とお客さんが話すのが楽しみで、調理中も聞き耳を立ててしまうほど。再び和歌山の味として定着する日まで、元祖アロチの洋食を提供していきます」
【フジヤ食堂】
和歌山市中之島2279
ヤマイチプラザ向之芝1階
☎073・425・2088
11:00〜14:00、
17:00〜21:00
㊐休み
(ニュース和歌山/2021年11月6日更新)