残業減にペーパーレス 城善建設で成果

 働き方改革が叫ばれる中、デジタル技術を生かして組織を変え、業績改善を図る「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の注目度が高まっている。導入企業が増えているほか、県も来年度、効率的な行政運営へ向け、「DX本部」を設置する方針。「DX」とは何か? 全国100万以上の事業所と取り引きのあるリコージャパンが、経営革新に取り組む企業の和歌山県代表として、中小企業応援サイトで紹介した城善建設(和歌山市十一番丁)の例を見た。

 同市北部、大規模施設の工事現場で監督を務める岡﨑保さんの手には、大きな紙の図面ではなく、コンパクトなタブレット端末。「昔は広い現場で建築、電気設備、機材設備と複数の図面を持ち歩いていたが、今はこれ1つです」

 住宅事業はじめ、店舗や公共施設など大型建築を手掛ける城善建設で、DX導入の中心となるのが、管理部の和田正典さん。東京のメーカーやITコンサルティング会社で勤めた後、地元の和歌山市へ戻り、2014年に入社した。

 現場の作業を効率化するため、図面や物件情報、顧客情報、見積もりなどを、社外のインターネット上に保管する「クラウド化」を進め、いつでもどこでも確認できるようにした。社内のサーバーで管理していた以前は、本社と2ヵ所ある展示場からしか見られなかった。

 岡﨑さんは「本社に戻る回数は大きく減った。その分、密度の濃い仕事ができるようになりました」と歓迎。和田さんは「例えば岩出市の現場にいる時、別の物件に関する図面が必要になれば、和歌山市まで戻らなければならなかった。これがいつでも、どこでも見られれば、顧客に間を置かずお話しして安心していただけたり、次の作業をどうするか即座に判断し、現場へ指示できたり。積み重なれば工期を短縮できます」と語る。

 現場だけではない。電子帳票システムもクラウド化し、ペーパーレス化を図った。これにより、1ヵ月あたり約8500枚の紙を削減。資料の検索が容易になり、文書管理に必要な手間が省けたため、総務、経理部門で常態化していた2時間ほどの残業は、繁忙期以外はゼロになった。

 和田さんは「情報を早く得られれば社員の時間をねん出できる。その結果が顧客サービスにも、社員のストレス軽減にもつながる」と強調。さらに、「台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンさんは『ITは機械と機械をつなぐもの、デジタルは人と人をつなぐもの』と話されました。今後も人に対してできることは何かを考え、そこにデジタルで手を差し伸べていければ」と意気込んでいる。

写真=工事現場でタブレット端末を手に打ち合わせする和田さん(左)と岡﨑さん

(ニュース和歌山/2021年12月4日更新)