ビオトープ孟子

 豊かな里山が残る海南市の孟子不動谷。子どもたちが生物と触れ合い、自然について学べる場所を未来に残そうと環境保全活動に取り組むビオトープ孟子は、地域にあった古民家の廃材を使い、複数のトンボ池が集まる一画を再生した。有本智理事は「掘り返した池を、民家の柱で補強した。水草の植生が回復し、トンボたちが産卵に来てくれるのが楽しみ」と期待する。

 ビオトープ孟子は1998年に活動を開始。雑木林の間伐、稲作、池の整備など手を入れることで、トンボやカエル、野鳥といった、昔から人間と共存してきた小さな生き物が暮らせる環境の維持に努めている。

 再生した池は元々、準絶滅危ぐ種のトンボ、タベサナエが産卵していた。しかし昨春、イノシシに荒らされ、水が溜まらなくなり、やむなく埋め立てた。

 同じころ、池のそばにあった築100年以上の古民家を買い取った。子どもたちが宿泊しながら自然観察や環境学習できる施設にするためだったが、耐震基準を満たさず、解体せざるを得なかった。そこで県の農業農村活性化支援モデル事業の助成を受け、廃材を活用し、池を再生した。

 使った太い柱にはほぞ穴が残る。有本さんは「クギを使わず、ほぞで組み上げた立派な日本家屋でした。地域の資料として残したかったが、なくすのはもったいない。せめて柱は資源として里山保全に生かすことにしました」。

 同事業を3年かけて進める計画で、今年は間伐した雑木で原木しいたけ栽培を復活させ、その後にクワガタやカブトムシの幼虫が育つ環境をつくる。「里山の生き物は人間が手を加えた環境で生息するが、里山が減ったことで激減している。施設を造っても生き物がいなければ意味がない。小学校の唱歌に出てくるトンボやカエル、ホタルなどを見られる環境を守っていきます」と話している。

写真=ほぞ穴が残る民家の柱を活用

農業農村活性化支援モデル事業企画提案募集

 過疎化や高齢化で活気が失われつつある中山間地域の保全や遊休農地を活用した特産加工品づくりなど。和歌山市を除く農村地域で活動したい団体対象。応募は3月15日までに各振興局の農地課へ。詳細は和歌山県里地・里山振興室HP

 

(ニュース和歌山/2022年2月5日更新)