まさか海南市の黒江という町に自分自身が根付くとは思っていませんでした。和歌山市に生まれ育った私は、路地裏にたたずむ築180年の古民家カフェ、黒江ぬりもの館で、2017年から来訪者をおもてなししています。3年前には家族共々、引っ越してきました。

 昨年9月末までの3年間は、「海南市地域おこし協力隊」として、地域のPR活動を行いました。任期終了後の現在はまちづくり会社、楽善舎の代表を務めています。

 黒江は和歌山市中心部から車で約30分の距離にあります。紀州漆器の町として栄え、築100年以上経つ瓦屋根の古い建物がいくつか残っています。初めてこの町を歩いたのは13年。どこか懐かしさを感じ、まるで小旅行に来たような気分を味わいました。

 一方でよぎった「何か仕掛けがもう少しあれば、もっと人が訪れてくれるのではないか?」との思い。その感覚が、めだかを通してレトロな町歩きを楽しんでもらう「黒江めった祭り」、漆塗りや棕櫚(しゅろ)たわし作りといった様々な体験ができる「黒江るるる」など、ここ数年携わった来訪者増への仕掛けづくりにつながっています。

 これらのイベント運営で仲間たちと意見やアイデアを出し合い、切磋琢磨してきた体験の積み重ねが、出会いにつながり、新しい挑戦への後押しになってきました。

 私にとってはこのコラムも大きなチャレンジです。執筆する上で肩書きをどうするか悩みましたが、〝黒江コンシェルジュ〟に決めました。コンシェルジュとはホテルで宿泊者の様々なリクエストにこたえる「総合世話係」のプロを指します。黒江を存分に楽しんでもらえるように案内し、来訪者に寄り添える人がいたらどんなに素敵だろう。そんな人でありたいとの思いを込めた造語です。

 この欄からまた新たな出会いが生まれるのを楽しみに、黒江に留まらず、和歌山県内で熱を感じられることを探しながら、お伝えしていきます。

黒江コンシェルジュ 瀬戸山江理(第2土曜担当)

(ニュース和歌山/2022年4月9日更新)